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03.地下鉄
窓の外は、真っ暗。
その真っ暗な中で、光が線みたいに飛んでいく。
ほんの少し、現実から離れているような光景を見て。
それから、隣に座っているお兄さんに目を移す。
疲れているらしいお兄さんは、座席に身を預けて、ぐったりとしている。
何か、あったのだろうか?
地下鉄の車両の、その一つには二人だけが乗ってる。
その内一人が、このお兄さんなわけだけど。
どうやら、お兄さんは疲れているだけではない様子。
投げ出されている右手には、黒光りする銃が握られているし。
服には返り血…だろうか、赤い物がべっとりとついている。
何か、あったのだろうか?
訊きたい気もしたけれど、今は黙っておこう。
きっと、今はゆっくりと休みたいのだと思うから。
決して眠っているわけではないお兄さん。
だけど、眠そうにしているお兄さん。
どうして眠らないのだろう?
眠りたいのなら、眠ってしまえばいい。
なのにしないのは……警戒しているから?
それなら自分は、ここからいなくなったほうが良いのかもしれない。
けれど、一人にしてもいけない気がした。
誰か、隣にいてあげるべきだと、感じていて。
だから、横でちょこんと座ったまま。
穏やかな、だけど緊迫してるみたいな、そんな奇妙な空気が流れる。
こういうのは……嫌いじゃない。
お兄さんはどうだろう?嫌い、だろうか?
考えながら、違うだろうとそれを打ち消す。
あんまり急に、穏やかなだけの空間に放り出されたら、きっと戸惑うから。
ふと、電車が減速していくのを感じる。
あぁ……そろそろ終点みたい。
完全に止まりきった電車の中で、二人一緒に立ち上がる。
ホームに降りて、去っていく電車を眺めていると。
ふいに、頭に暖かな重みを感じた。
顔を上げてみると、お兄さんが優しそうな笑みを浮かべているのが見えた。
何だか嬉しくなって微笑むと、お兄さんは銃をしまった。
それからヒラリ、と手を振って、ホームから出るための階段へ。
慌てて、アレルヤも後を追う。
夢の中には苦痛はない。まぁ、痛みはあるけれど。
そういうわけだからか、いくら走っても疲れはしない。
でも、小さな体だから、現実の姿よりは足の尺度が……ちょっとだけ。
だからそのせいで、なかなかお兄さんに追いつけないことが悔しい。
夢の中でもあの姿なら、きっと、普通にしていても隣を歩けるのに。
それが、少しだけ口惜しい。
今回のヒト……「ロックオン」
あくまでイメージです。