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家に戻った刹那は、整理整頓と掃除を開始した。
別に、何もない場所だからそんなことをする必要はない。が、やはり新しい住人を迎え入れるのだから、少しは綺麗にしておいた方が良いだろう。
ティエリアにうまく丸め込まれた感がしなくもないが、それでも選択をしたのは自分だ。このくらいはしておかないと。
棚も少しは整頓しておくべきかと、引き出しを一つ開く。
その中には、町の人々からもらった数々の小物が入っている。殺風景すぎる刹那の家に、どうにか飾りを付けたかったらしい。まぁ、結局は使われることなく、引き出しの中で眠っているわけであるが。
刹那は中にあった物を取り出していって、最後に残った物を、他とは全く違う手つきで取り出した。
それは、実にシンプルな銀製の首飾り。
小物の中でこれだけが、自分の故郷の匂いを纏っている。唯一の、この町に来たときの刹那の持ち物だった。いつも身につけていた物だったから。
今では恥ずかしくもあり、あまりかけてはいないが……たまには、付けてみるのもいいかもしれない。
しかし、その前に片付けだ。
あまり使わない物を奥の方へおいていって……手が、止まった。
視線の先にあるのは、青い結晶の嵌められた小さな指輪。
……どうして、装飾品にばかり思い出の品があるのだろうか……あぁ、無くしさえしなければずっとあるし、消えることも滅多にないからか。だから、贈り物などに向いていると、そういうことだろうか。
ため息を吐いて、刹那はそれを手に取った。
これは、誰からもらったか覚えていない。ただ、黒、としか記憶にないのだ。
多分、この町に来てからの話だと思うのだが……曖昧すぎて、どうにも。顔はおろか、性別すら思い出せない始末だ。
記憶力はいいほうだと思うのだけど…。
ルーツはどうにしろ、これも大切な物には違いない。
首飾りの横に、指輪も転がしておく。
その後は気になる物も何もなく、全て引き出しの中に入れた。
そして片付けを終えて、刹那は指輪に首飾りの紐部分を通して二つを身につけた。指輪を付けなかったのは、そういうキャラではないと知っているから。