[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
44
「よ、アーデの家の双子君!」
「アレルヤ、今日はキャベツが安いけどどうする?」
「お隣にいるのは誰?新しいお友達?」
「ハレさんはいないのかい?珍しいね…」
「後で刹那にもよろしく言っといて。あの子、こっちこないし」
「銀目のお兄ちゃん、時間ある?」
……町にアレルヤと来てみて、どれほど彼が人気者かが分かった。
性格が丸いし、優しいし、手先も器用だそうだから、老若男女関わらずに仲良しさんがいるらしい。とても納得だ。
だからか、物凄くたくさんの住民に話しかけられていた。それ一つ一つに、笑顔で答えるのもきっと、彼の人気を支える要因なのだろう。
まぁ、人気を取ろうと考えずに答えている、という点で既に、好ましくは感じるけれど。
「お前、本当に愛されてるな」
「愛って……単に、仲良くさせてもらってるだけです」
そう言う彼は、大きめの紙袋を一つ抱えていた。
それは確か……色々な種類の菓子。途中立ち寄った菓子屋で、少しばかり真剣な顔で選んでいたのだ、そういえば。
店主からは「座敷童の嬢ちゃんの所に行くのか?」と訊かれていて、その言葉からこれから『異端』の所に行くのだというのが判明した。
座敷童は、家に住まうことでその家に利益を与える『異端』だ。
総じて大人しく、人に危害をくわえることは少ないそうだが……怒らせると、とたんに福の神から貧乏神へと姿を変える。
そういう……付き合い方はよく考えないといけない『異端』で、実は狩るにはやっかいな相手だったりする。運から見放されてしまうのだから。彼らと狩ろうとして、上から落ちてきた植木鉢で頭を打ち、返り討ちに遭ってしまった『狩人』の話は有名だ。
いや、別に自分は何もする気はないけれど。
トリニティ三兄弟みたいな、極悪なのは除くとして。
「で、どこに行ってるんだ?」
「えっとですね……イアンさんの家です。発明家なんですよ」
「へぇ……発明家、ねぇ」
こんな田舎で、どんなものを作れるというのだろう。
純粋に興味が湧いた。
「で、そこには座敷童も住んでるってか?」
「はい。フェルトって言うんですよ……あ、狩らないでくださいね」
「……それ、凄く今更だと思うんだが」
呆れてアレルヤを見る。
そういうのは、もっと先に言っておくべきだと思うのだけど。
まぁ、それが彼らしいということで、自分が信頼されているということなのかもしれないが……。
苦笑して、そう思うロックオンは知らなかった。
この後、運命の出会いが待っていることを。