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「オイ、貧乳」
「……それは悪口のつもりですか?なら、世界中の貧乳の皆さんに謝ってください。今すぐに。四百字詰め原稿用紙百枚分くらいの反省文を書いて、朗読です」
「知るかンな事。つーか、多すぎだろそれ!?書けるわけねぇだろうがッ!読むのもメンドイしそれ!何より紙の無駄遣いだッ!」
庭いじりをしているハレルヤを、暇だったから冷やかしのために眺めていただけなのに……いつの間にか、いつものような口ゲンカになっている。
まぁ、冷やかす要因がないほど彼の仕事は確かだったから、ボコすのには丁度よかったかもしれない。もちろんボコすというのは、肉体的にではなく精神的に。痣なんて作ってしまったら、アレルヤが心配するので。
「ったく……やっぱ、テメェとは馬が合わねぇな」
「嬉しい言葉ですね。ありがとうございます。貴方と一緒なんて嫌なので、清々しいです」
「その意見には賛成だが……ケンカ売ってんのか?」
「いいえ?本心を述べただけですが」
……どうしよう、やっぱり、肉体的にボコすべきだろうか。幸い、アレルヤだけでなくこの館の主もいないから、邪魔は入らない。思う存分……は、建物が危険だから無理だけれど、ある程度はいけるだろう。
いい加減、どちらの力量が上なのかをハッキリさせるべきだろう。それから、今までの行いをしっかりと反省してもらう。あぁ、それが一番だ。
調子に乗っている相手には、しっかりと現実を教えてあげよう。
「どっちが上か、ハッキリさせとくか?」
「えぇ。そうしましょう。場所は庭ということで」
「テメェ、よっぽど俺が嫌いらしいな…」
「お互い様です」
というか、ここ意外にフィールドもないし。
いや、ソーマの『異端』としての力を使ったらあっという間に、別の所にはいけるけれど、わざわざやるのも面倒。相手はハレルヤだし、そんな丁寧なマネは必要ない。
決して、目の前にいる彼が今の今までいじって綺麗に整えていた庭を、この機にズタボロにして精神的にも攻撃しておこうだなんて、そんなことは考えていない。彼がさっきまで枝を整えていたあの木を消し去ってあげようかだとか、そんなこと。
だから、庭が被害を受けてもそれは偶然なのである。
故意ではない。
「今日という今日は……」
「決着を……」
にらみ合う、ソーマとハレルヤ。
張り詰めた空気が二人の間を漂うが……それは、二つの存在に破られてしまった。
町に行っているアレルヤたちではない。
部屋にいるトリニティたちでもない。
家に戻っている刹那でもない。
それは、新しい人物。
「たっ……助けてください!」
一人の少年が、一人の少女の手を引いて、そう叫びながら庭に駆け込んできたのだ。