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「もう一度訊くが……何をしている?」
「防壁。敵がもう少しで来るから、その対策」
言いながら、彼は自らの傍らに世界の裂け目を作り出した。
ちらりと見れば、その裂け目は……どうやら、ティエリアの屋敷へと繋がっているらしかった。
早く帰れ、という遠回しの言葉ではないだろう。彼とは長い付き合いだから、そっち方面に頭が働かないのはよく知っている。
ということは……。
「俺の屋敷には、まだ仕掛けをしていないということか?」
「今のところ、一番安全だから。後回し」
「あぁ……」
なるほど、確かにそうだろう。あそこには今、ハレルヤにソーマがいる上に、トリニティ三兄弟も滞在している。
先ほどのスメラギの「町を幾つも壊してきた」発言から、広範囲攻撃が可能なのが一人、あの三兄弟の中にはいると推測される。そうでもないと、町という大きな物を壊すのは……なかなか、骨が折れる仕事だろう。
というわけで、強い『異端』たちがいるから屋敷の安全は保証……されているのだろうか……?いささか、不安なのだが。
今でも、ハレルヤとソーマが争っていないかとか、ハレルヤがヨハンに突っかかっていないかだとか、ハレルヤがミハエルにいちゃもんを付けていないかとか、ハレルヤがネーナにちょっかいを出していないかだとか……心配は尽きない。
……ハレルヤ関係が多い気がするのは、気のせいだろうか。
というか、あのメンバーの中で原因になりそうなのは彼くらいの物だろう。あぁ、ソーマとネーナは馬が合わないかも知れない。
まぁ、もしも問題を起こしていたら、何が理由でも関係ない。思いっきり殴りつけるか蹴りつけるかするだけだ。
「もう行くけれど……ティエリアは?」
「俺も行く。用事は済んでいるからな……それより、いいのか?」
「え?」
「戻らなくてもいいのかと訊いている」
裂け目に入りかけた彼は、あ、という顔をして、それからニコリと微笑んだ。大丈夫、ということらしい。
彼の『大丈夫』はいつも大丈夫ではないから、心配ではあるけれど。
そういうことならば、と、ティエリアも裂け目方向へ足を進めた。