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唐突に、肩の辺りに重みが生じた。
何だ?と思いながら目をやると、そこには頭が一つ乗っていて。
「……眠っちゃったんだね」
「人の家でも寝るのか、コイツは……」
そのことに少し呆れる。自分の住んでいる場所だけならまだしも、人様の家でよくもまぁ……冷静なフェルトの様子からして、こういうことも初めてではないようだし。一人でいるときこうなったら、一体どうするのだろう。行き倒れてしまうのか。
訊けば、しかし彼女は首を振った。
「いつも、一人だけで町には来ないから。倒れることはあっても……誰かが、ちゃんと支えてくれるの。それに眠っちゃうのは、アレルヤにもどうしようもないことらしいから」
「どうしようもない?」
「らしいよ。ティエリアが言ってた」
「へぇ……」
彼の中の、血の問題だろうか。とびきり弱い吸血鬼だそうだから、力の消費を押さえるための無意識の行動なんてことも……有り得ないとはいえないだろう。それならば、何となく納得も出来る。
と、ここで、ロックオンはある事柄を思い出した。
眠っている彼は、一日に一回は必要だという吸血を、まだ、やっていないのではなかっただろうか。
……大丈夫か?
不安になるが、こればかりは仕方がない。本人が自分に寄りかかって、規則正しい寝息を立てている以上。
が。
「ロックオン、アレルヤはまだ、血を飲んでなかったりする?」
「え?あぁ、そうだけど」
「なら、気をつけた方が良いよ」
どういうことかと、聞き返す間もなかった。
隣の彼がもぞりと動いたのに気づいたのとほぼ同時に、首筋に鋭い痛みが走ったのだ。
何とか状況を把握してみると……アレルヤの腕がいつの間にか首に回されていて、彼の体の向きも噛みつきやすそうな状態になっている。
つまり、噛みつかれたのだ。眠っている彼に。
混乱する中、フェルトがゆっくりと口を開く。
「眠っているとき、まだ血を吸ってないときに人間が近くにいると……ついつい噛んじゃうんだって。本人が言ってた」
「……そういうことは、もっと早く言ってくれ…」