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……実はネーナもまた、発明家の家にいた。もちろんアレルヤとロックオンが同じ場所にいることは知らない。彼女がいるのは、奥のもう少し奥だ。
ただ、暇だったから外に出てフラフラと歩いていたら、ちょっとした出会いをしてしまったのだ。別に、彼らがいるから来たわけではない。というか、ネーナはいるということを知らないのだから、それを目的にするのは不可能だ。
イアンという、父親か祖父か……とにかく、そこらへんの…多分、父親の方が近い年代の男性と、偶然町で出くわしたのが始まり。軽く話してみると意外と仲良くなって、それで彼の家へ……という話になった。
そして、ネーナは運命の出会いを果たしたのだ。
形は球体。耳(?)はパタパタと動いて、転がるというか飛び跳ねて移動する。目つきが悪い上に口も悪い。さらに言うと、色は紫色。もっと別の色は……というのは、言うだけ無駄か。
そんな、好ましく思える場所が一転も見あたらない気がするというか絶対無い彼に、ネーナは変な意味ではなく惹かれてしまったのだ。ビビビッときた、というのが一番正しいだろう。
訊いてみると、これは持って帰ってもいいということで。ネーナは嬉々としてもらい受けることにした。イアンは気前の良い人だった。
紫の球体……HAROを膝に乗せて、つらつらと思う。
この町を燃やしてしまわなくて良かった。そんなことをしたら、この球体には出会うことが出来なかった。
それに、町の人々にも会えなかった。少し話しただけの人もいるけれど、どの人も優しくて、柔らかで、気持ちの良い人だった。もちろん、住んでいるヒトもそう。
この点は、あの黒衣の少年に感謝するべきだろう。彼のお陰で、ネーナは数多くの出会いを果たすことが出来たのだから。
今後は、町を壊すのは止めようかな。と思う。気の向くままに炎を操り、何でもかんでも破壊し尽くそうとするのは。
もしかしたら……今まで、ネーナは足し悦な出会いの場を自分から無くしてきたのかも知れない。だとしたら、何ともったいないことをしてきたのだろう。
急に悲しく思えてきて……ついに、キチンと決めた。
無闇に、物を壊すのは止めよう、と。