[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
シリアス。
…たまに、こういう雰囲気のが無性に書きたくなります。
僕は『一人』を辛いと思ったことはない。
他人から見たら、僕は一人だったのかもしれないけど、僕には大切な片割れがいた。だから一人でも『一人』じゃなかった。
だから、僕は『一人』でも満足だった。
ある時、僕は『仲間』という存在を得た。
ずっと『一人』でもいいと思っていた僕にとって、それを持つことは酷く新鮮で不思議で……恐ろしかった。
今まで片割れと築いてきた世界が壊れるんじゃないかと。
僕らの世界に新しい住人が現れるんじゃないかと。
表面に出しはしなかったけれど、僕は恐怖に震えていた。
変化を望んではいなかったから。
片割れが、アイツら全員殺すか?と、訊いてきたことがあった。
俺たちの世界には二人だけ住人がいればいい。新しく誰かを招き入れる必要はない。入ってくるかもしれない可能性を持つなら、それは早めに摘むべきだろう、と。
僕は考え、首を振った。横に。
彼の言うことは正しいのかもしれない。いや……正しいのだろう。
それでも、だからといって『仲間』を傷つける事に、抵抗を感じないワケではないのだ。
ダメだよ……と言うと、彼は鼻で笑った。
どうせ死ぬヤツらだ。早いか遅いかの違いだけだろ。
その言葉に、僕は静かに微笑み返すしかなかった。
僕らのことを含め、それは事実だった。
お前凄いな、と褒められたことがあった。
言ったのは僕よりも年上の、『仲間』の一人。
彼が「凄い」と言うのは、先ほどのシミュレーション訓練のことだろうか。
とりあえず、ありがとうございます、と返すと、堅いな、と苦笑を浮かべる彼。
もっと自然にしてろよ。そう笑いかける彼には申し訳ないが、これで限界だ。
何故なら、彼は『仲間』であろうと『他人』なのだから。
どう対応するべきかと悩んでいると、ぽん、と頭に軽く手が触れた。
見れば彼は優しげに微笑んでいて。
僕も、ああいう表情が出来ればいいのにと思った。
林檎を分けてもらったことがあった。
戸惑う僕にソレを一つ、半ば強制的に押し付けた彼は、やる、とただ一言だけ口にした。相変わらずの無口さだったけれど、それが彼なので気にはしない。
君はいいの?と訊けば、まだたくさんある、という返答。
なら、と囓ったその林檎は甘酸っぱくて美味しかった。
ありがとうと言いながら、思う。
僕は、彼にちゃんと笑いかけているだろうか?
君はどうして殻に閉じこもっている、と溜息を吐く人がいた。
思わず首をかしげると、再度、溜息。
呆れか、怒りか、あるいは悔しさを表すような表情を浮かべ、彼は言う。
君は、一人でいても構わないと思う傾向にある。他人を必要としていないだろう?一人だけの殻に籠もり、君は他者を拒んでいるのではないか?
問われ、僕は答えることを躊躇した。
彼の言う通り。僕は一人でも『一人』だから、片割れがいるから、他人がいなくても悲しくはない。
合っているのだから、以前は即座に首肯しただろう。
だけれど、僕は……。
だから、とっとと殺しときゃ良かったんだよ。
身の内から、声が響く。
お前は世界の中にアイツらを入れた。必要ねぇのに。眼鏡に訊かれて躊躇ったのは、それが原因だろ?言わんこっちゃねぇ。
片割れの声を聞いて、納得した。
単なる『他人』だった『仲間』は、今や立派な『世界の一部』になっていたのだ。
もう、彼らというピースが欠けてしまうことは、耐えられない。
一人、いなくなってしまった。
どこか、世界が色褪せた気がする。
君は消えないよねと、僕は不安げに片割れに尋ねた。
もしも。考えたくはないが、もしも彼までいなくなってしまったら、僕はどうしたらいいのだろう?世界はどうなってしまうのだろう?
すると、彼は笑った。バカだろ、と。
俺はお前を残してどこかに行くなんて、んな事はしねぇよ。だから。
言いにくそうに、片割れは一度、そこで言葉を切った。
……在りもしない未来を考えて、泣くんじゃねぇ。
僕は彼の言葉に始めて、頬を伝う液体に気がついた。
結局、片割れもいなくなってしまった。
世界から、ほとんどの色が抜け落ちた。
一人で宇宙を漂いながら、他の二人は大丈夫だろうかと思考を巡らせる。
無事だったらいい。あの二人も今や、僕にとってはかけがえのない存在だ。彼らまでいなくなってしまったら、きっと僕の世界から色は全て失われるのだろう。
目を閉じて、闇に身を委ねる。
他人を……先にいなくなってしまった彼の存在を、認めてしまったから悲しみは増した。
けれども、そのことに、世界を『他人』に開いてしまったことに後悔はない。
代わりにたくさんの、たくさんの『大切なこと』を教えてもらったから。
だから君たちの所へ行こうなんて、贅沢なことは考えない。
考えたら、片割れに怒られてしまう。これ以上望むな、と。
だから。
僕は、生きている限り生き続けよう。
この先に、救いも何も、無かったとしても。
アレルヤ独白。
少しずつ、他の仲間たちに心を開いていってたら…いいな。
過去が過去なので、マイスターたちは誰か、とかじゃなくて全員が、他人を信頼するのが大変そうです。でも、信頼できたらきっと、とても仲良くなれるんじゃないかな、と。
問題はその信頼で、上辺だけそうなのか、それとも心の底から思っているのか……それが、しばらくは不安になったりするのかな…。