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シリアス。
…たまに、こういう雰囲気のが無性に書きたくなります。



 僕は『一人』を辛いと思ったことはない。
 他人から見たら、僕は一人だったのかもしれないけど、僕には大切な片割れがいた。だから一人でも『一人』じゃなかった。
 だから、僕は『一人』でも満足だった。

 ある時、僕は『仲間』という存在を得た。
 ずっと『一人』でもいいと思っていた僕にとって、それを持つことは酷く新鮮で不思議で……恐ろしかった。
 今まで片割れと築いてきた世界が壊れるんじゃないかと。
 僕らの世界に新しい住人が現れるんじゃないかと。
 表面に出しはしなかったけれど、僕は恐怖に震えていた。
 変化を望んではいなかったから。

 片割れが、アイツら全員殺すか?と、訊いてきたことがあった。
 俺たちの世界には二人だけ住人がいればいい。新しく誰かを招き入れる必要はない。入ってくるかもしれない可能性を持つなら、それは早めに摘むべきだろう、と。
 僕は考え、首を振った。横に。
 彼の言うことは正しいのかもしれない。いや……正しいのだろう。
 それでも、だからといって『仲間』を傷つける事に、抵抗を感じないワケではないのだ。
 ダメだよ……と言うと、彼は鼻で笑った。
 どうせ死ぬヤツらだ。早いか遅いかの違いだけだろ。
 その言葉に、僕は静かに微笑み返すしかなかった。
 僕らのことを含め、それは事実だった。

 お前凄いな、と褒められたことがあった。
 言ったのは僕よりも年上の、『仲間』の一人。
 彼が「凄い」と言うのは、先ほどのシミュレーション訓練のことだろうか。
 とりあえず、ありがとうございます、と返すと、堅いな、と苦笑を浮かべる彼。
 もっと自然にしてろよ。そう笑いかける彼には申し訳ないが、これで限界だ。
 何故なら、彼は『仲間』であろうと『他人』なのだから。
 どう対応するべきかと悩んでいると、ぽん、と頭に軽く手が触れた。
 見れば彼は優しげに微笑んでいて。
 僕も、ああいう表情が出来ればいいのにと思った。

 林檎を分けてもらったことがあった。
 戸惑う僕にソレを一つ、半ば強制的に押し付けた彼は、やる、とただ一言だけ口にした。相変わらずの無口さだったけれど、それが彼なので気にはしない。
 君はいいの?と訊けば、まだたくさんある、という返答。
 なら、と囓ったその林檎は甘酸っぱくて美味しかった。
 ありがとうと言いながら、思う。
 僕は、彼にちゃんと笑いかけているだろうか?

 君はどうして殻に閉じこもっている、と溜息を吐く人がいた。
 思わず首をかしげると、再度、溜息。
 呆れか、怒りか、あるいは悔しさを表すような表情を浮かべ、彼は言う。
 君は、一人でいても構わないと思う傾向にある。他人を必要としていないだろう?一人だけの殻に籠もり、君は他者を拒んでいるのではないか?
 問われ、僕は答えることを躊躇した。
 彼の言う通り。僕は一人でも『一人』だから、片割れがいるから、他人がいなくても悲しくはない。
 合っているのだから、以前は即座に首肯しただろう。
 だけれど、僕は……。

 だから、とっとと殺しときゃ良かったんだよ。
 身の内から、声が響く。
 お前は世界の中にアイツらを入れた。必要ねぇのに。眼鏡に訊かれて躊躇ったのは、それが原因だろ?言わんこっちゃねぇ。
 片割れの声を聞いて、納得した。
 単なる『他人』だった『仲間』は、今や立派な『世界の一部』になっていたのだ。
 もう、彼らというピースが欠けてしまうことは、耐えられない。

 一人、いなくなってしまった。
 どこか、世界が色褪せた気がする。

 君は消えないよねと、僕は不安げに片割れに尋ねた。
 もしも。考えたくはないが、もしも彼までいなくなってしまったら、僕はどうしたらいいのだろう?世界はどうなってしまうのだろう?
 すると、彼は笑った。バカだろ、と。
 俺はお前を残してどこかに行くなんて、んな事はしねぇよ。だから。
 言いにくそうに、片割れは一度、そこで言葉を切った。
 ……在りもしない未来を考えて、泣くんじゃねぇ。
 僕は彼の言葉に始めて、頬を伝う液体に気がついた。

 結局、片割れもいなくなってしまった。
 世界から、ほとんどの色が抜け落ちた。

 一人で宇宙を漂いながら、他の二人は大丈夫だろうかと思考を巡らせる。
 無事だったらいい。あの二人も今や、僕にとってはかけがえのない存在だ。彼らまでいなくなってしまったら、きっと僕の世界から色は全て失われるのだろう。
 目を閉じて、闇に身を委ねる。
 他人を……先にいなくなってしまった彼の存在を、認めてしまったから悲しみは増した。
 けれども、そのことに、世界を『他人』に開いてしまったことに後悔はない。
 代わりにたくさんの、たくさんの『大切なこと』を教えてもらったから。
 だから君たちの所へ行こうなんて、贅沢なことは考えない。
 考えたら、片割れに怒られてしまう。これ以上望むな、と。
 だから。



 僕は、生きている限り生き続けよう。
 この先に、救いも何も、無かったとしても。



アレルヤ独白。
少しずつ、他の仲間たちに心を開いていってたら…いいな。

過去が過去なので、マイスターたちは誰か、とかじゃなくて全員が、他人を信頼するのが大変そうです。でも、信頼できたらきっと、とても仲良くなれるんじゃないかな、と。
問題はその信頼で、上辺だけそうなのか、それとも心の底から思っているのか……それが、しばらくは不安になったりするのかな…。

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