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 パチパチと……思わず、拍手をしていた。心から賞賛の意を示すために。いくら昔、自分が正体を伝えてしまっていたとはいえ、髪の長さも、背の高さも、肌の色も、声の色も変わっている。少しは『あっているだろうか』と、心配になる物だろうに。
 なのに、刹那は迷い無く答えた。

「正解だよ。よくもまぁ、こんな夢物語みたいな話、信じたね……」
「注意してみると雰囲気が同じだ。それに、瞳の色も変わっていない」
「え……?刹那、今、僕の目は紅いよ?」

 元々、アレルヤの目は銀色だ。右は金だが、そこはおいておいて。いつも見えている方がそちらだから、自分の色は銀ということにしておく。そうでないとハレルヤとの区別が付きにくい。

 銀と紅。この二つが『同じ』というのは有り得ないと思うのは、果たして自分だけだろうか……?
 首をかしげていると、焦れったそうに刹那が口を開いた。

「そういう直接的なものではなく……瞳に含まれている心…というか」
「言いたいことは何となく分かったけど……刹那、自分の中で意見が纏まってないね?」
「…………そうかもしれない」

 ぷい、と視線をそらした彼の様子に、ついつい微笑みを浮かべた。こういう場面を見ていると、やっぱり彼は子供なのだと思える。いつもが大人びているから、たまに忘れかけるのだけど……。

 そういう考えを口にして、ティエリアには『そんなことが有るわけ無いだろう。あの身長だぞ?』と呆れられ、ハレルヤには『お前、目が悪かったっけ?』なんて言われてしまったことを思い出していると、ちらり、と刹那がこちらを見た。

「ところで……なぜ、そんな姿を取っている?」
「というと?」
「いつものままでも、別に良いはずだ。それと、町に出る子供もお前……なのか?」
「うん。あれも僕」

 ただし子供の姿の時は、体から魂のような物が抜け出て、その抜け出た物が実態のような物を持って……という感じである。原理は良く分からないが……できるから、活用している。唐突な眠りの時、自然と出てしまうときも有るが。もちろんそうで無いときもある。

 姿を変えるのは基本的に、どうやら自分が使えるらしい特別な『力』を行使するときだけ。ここのところは、子供の状態だけでも充分対応できたのだが……如何せん、魂のようなものだけでは、できる事に限度があるようで、だからこそ、何が起こっても良いようにと、自分の姿を変えて現れたわけだ。

 ただ、刹那が言ってるのは姿を変える理由であり、そういう子供の状態ではない理由ではない。が……ちょっと、これは答える気がない。

 元の姿のまま『力』を使わない理由は……このようなことが、気持ちが悪いと思うから。
 自分はあくまで吸血鬼であり、したがってこんな『力』が使えるはずが無い。もちろん使える理由は知っている。自分で納得もしている。
 だからといって、他の人ビトも納得するとは限らない。

 もしも本当のことを言って、気味悪がられたらどうしようだとか、怖がられたらどうしようだとか、今までの心地よい距離を崩されたらどうしようだとか……そういう不安が、アレルヤの中にはある。

 皆に伝えようとは思わない。
 思えなかった。

 何も言えずに黙っていると、刹那がため息を吐き、アレルヤの腕を掴んだ。
 驚いて見ると、彼はしっかりと自分を見据えた。
 語らない自分の顔から、語っていない事柄を読み取ろうとするかのように。

「俺は……どんなアレルヤでも嫌いにはならない」

「……っ」
「それよりも、今は逃げるのだろう?」
「…うん」

 ありがとう、と呟いて、それからアレルヤは刹那と共に、再び走り出した。

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