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「ねぇ……刹那、アリー・アル・サーシェスのことは覚えている?」
「忘れるわけがない」
「……だよね」

 静かな言葉の裏のトゲトゲしい感情を汲み取り、アレルヤはため息を吐いた。いくら長い時間を費やそうと、刹那が彼のことを忘れることは無いのだろう。強い憎しみの感情と一緒になっているその記憶は、彼が生きている限り失われることはない。

 今は長い髪を弄りながら、これからどうしようかと頭を回転させる。傭兵部隊に退場してもらうのは決定事項として、ではあの緑の髪の彼はどうするべきか。普通に帰してしまうと、後々問題が起こりそうな気がする。理由はなく、これは……そう、直感だ。
 そして悲しいことに、こういう直感は総じて外れることはないのだ。

「ところで…いつまでその姿でいるつもりだ?」
「え?あぁ……この格好?」

 ボロボロの黒いロングコート、本来よりは若干低い背の高さ、白い色の手、見ることは出来ない紅の瞳。
 これらのことを、刹那は言っているのだろう。

「俺はもう知っている。隠す必要もないだろう」
「それもそうだけど。でも、隠すだけでなくて、これは一種の暗示も入ってるから」
「……暗示?」
「そ。ちょっとした、僕が嫌いな『力』を使うときにはこの格好。そういう姿じゃないと使っちゃいけないっていう自己暗示をね。効き目は……微妙、だけど」

 それでも一応の成果は出ていると言っても嘘ではない。昔のように普通にしている時でも『力』が暴発して、元・台所が消え失せるなどということは起こっていない。極めて危険なバランスで安定させることには成功している。

 だから習慣になってしまったのだろう。嫌いな『力』を使おうと思ったら、自然とこの姿になってしまうのだ。
 正体を隠すのにも便利で、だから放っている。直そうと思えば直る癖のような物だ。

「まぁ、やらないよりはマシ、ってところかな」
「なるほどな」

 苦笑して締めると、こくりと彼は頷いた。納得してくれたらしい。
 そのことに仄かに安堵して、刹那は?と訊く。

「刹那は、どうするのかな?」
「俺は……アイツを倒す」
「言っておくけど、君じゃ、まだ無理だよ」
「それでも行く」

 言う彼の瞳には決意の色。これは……もしかしたら差し違えてでも、なんて思っているかも知れない。
 それは困る。非常に。

 何と言っても刹那は他人、ではない。彼がいなくなってしまったら、とても嫌なのである。大切なピースは、一つも欠けずに残って欲しい……贅沢かもしれないけれど。

「じゃあ、僕もついていくよ?君一人は危ないから」
「いざとなったら割り込む気か」
「ふふっ……さぁ?どうだろうね?」

 そんなことをしたら怒られるだろうなと思いながら、それでもやるのだろうと他人事のように考えた。


 それから、今回は『心配すること』がか……と、誰に言うでもなく…。

 

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