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「ハレルヤ、こっちだよ」
「お前……そんな開けたとこにいるよか、もっと隠れようとか思わねぇのか?」
「普通にしてても見えないって知ってるでしょう?」
どうやってかは知らないが、ハレルヤに現在位置を知らせていたらしい。近くに来た彼ら三人組をアレルヤが呼ぶと、彼の片割れは苦笑して、他の二人は驚きに目を見張って、それでもこちらへと歩み寄ってきた。
なるほど……『見えない』というのは比喩ではないのかと、その様子を見て刹那は納得した。ロックオンとネーナの反応を見ていたら、それが嫌なほど良く分かった。
「追っ手とかはいないよね」
「それを俺に訊くのかよ?」
「あぁ…愚問?」
クスクスと笑うアレルヤの声は普段と全く同じ。つい先ほど、アリーと戦っていたときとは違っていた。つまり、もう正体を隠すのを止めたと言うことでもあるのだろう。おそらく、自分に洗いざらい話してしまって吹っ切れたというのが、大きな理由だと思うのだけども。
実際、ロックオンは気づいたらしかった。長髪で白肌で紅い目でほんの少し背の低くなっている彼を指さして、パクパクと口を開いている。無理もない反応である。
対してネーナは、こちらも分かったようだが反応が違う。どうやったのか……という興味津々の表情で見ていた。微かに、何かを聞きた気にもしていたが、そちらはどうやら好奇心に負けてしまったようだ。
これは異端と人間の意識の違いか、あるいは両者の常識についての違いか、それとも単に性格の違いか……何だか全てが理由な気もしてくる。
「てか…お前、コレのために使ったのかよ」
「さぁね?どうだろ。それに…コレ、暫くしたら治るし気にいなくてもいいよ?」
「そゆ問題じゃねぇっての」
二人にしか分からないことを話している、今でもわりとどこかが似ている双子を眺めながら、服の上から首にかけていた物にそっと触れる。
首飾りと、それに通されている指輪。
青い石の付いているこれについては、今、訊いておいた方がいいだろうか。折角の機会だし、早めに知っておきたい。親愛の証、というだけの物である可能性も、彼のことだから有り得ないとはいえないが……。
「…訊きたいことがある」
「何?」
「この指輪、覚えているか?」
取り出してみせると、アレルヤは驚いたらしい。あ、と言い目元を和ませた。
それから懐かしげに触れ、口を開いた。
「刹那……コレ、持っててくれたんだね…」
「あぁ。もしかして何かあるのかと思ったんだが…考え過ぎか?」
「考え過ぎとは違うよ。コレはお守り」
「お守り……?」
それは……どういうことだろう。
首をかしげていると、アレルヤが名残惜しそうに指輪から手を離し、それから微笑んだ。
「これはね、刹那が大変な状況になったら助けてくれるんだ。ただし、効力は一回きり。使ってしまったら、その後は普通の指輪と一緒だよ」
だから、できるだけ危険には飛び込まないでね、と言う彼に、刹那はこくりと頷いた。
言葉の中から、出会った頃というかなり昔から、ずっと心配されていたのだということを感じて。