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突然のことで色々と衝撃は受けたが、受け入れてしまえば何でもない……ワケはないが、案外素直に納得できたという事実に苦笑する。全く元の姿とは似ていないのに、どこかが似ていることが理由だろうか。
あの後……つまり刹那が一つの指輪を取り出して、それについて話していた後、様々なことを教えてもらった。町に出没する子供の話、アレルヤが少々特殊なのだという話、ハレルヤもティエリアもそれを知っているという話。とにかく、現状態で知っていても損にはならないであろうことを、多数。
お陰であの町とこの森に施された仕掛け、敵の総数など必要な知識を得ることが出来た。戦うなら知識を得ることは必須事項。隣を見れば、刹那もネーナも真剣そうに聞いていた。
戦う……その単語を素直に思い浮かべたことに、ついつい呆れてしまう。自分は狩人で、本来なら『敵』側の人間だというのに、一体どういう巡り合わせでこちらに付いているのか。まぁ、それは間違った行動ではないと思うので、何も気にはしていないけども。
「で、突然だけど……ロックオン、銃を貸してくれませんか?」
「銃を?お前さんが使うのか…?」
「まさか。僕にはソレは似合いません。ちょっとした仕掛けを施したいと思って」
素直に渡すと、ありがとう、と礼を言って、それからアレルヤは懐から紫色の小さな結晶を取り出した。
「何すんだ?」
「大したことじゃないですよ。ちょっと威力を高めるだけです」
「いや、お前の大したことじゃないは、だいたい大したことだろ」
「え?そうなの、ハレルヤ?」
首をかしげながら、彼はその結晶を……指先でパキンと砕いた。
おそらく軽く力を込めただけだ。それだけで壊れるというのは、一体どれほど脆い結晶なのだろう。
その後は劇的で、粉になった紫色のソレは、ふわりと風に乗るように飛び、狙い澄ましたかのよう六発はいる空の弾倉へと吸い込まれていった。慌てて除いてみればそこには白く光る弾がある。
「これは……」
「凄い!ねぇ、私には何か無いの?」
驚いていると、同じく弾倉を覗いていたネーナが無邪気に尋ねた。ロックオンにはどうやらコレ、刹那には指輪。ハレルヤは分からないが……とにかく、彼女も何かが欲しいと思っているようだ。
「ネーナに?なら……えっと……手、出して」
「手?はい」
差し出された手を取り、次にアレルヤがした行動は、ハッキリ言うと想像の外にあった。
何をしたかというと……ネーナの手の甲に、軽く唇を付けたというか…。
まぁ、そういうことで。
「アレルヤ…お前、何やって!?」
「え……お守りをあげたんだけど…ダメだったかな?」
「ダメではないが、コイツには勿体ないくらいだ。もっと程度が低くても良かった」
「ちょっと刹那、それ何?酷くない!?」
そして、その行動が引き起こした状況は、これらのセリフから推測できそうな……というか、セリフそのものの事態。深刻な物ではなく、むしろ現状においては不釣り合いなほど緊張感の無い物で……ちょっと、楽しい。
だから、少し自分も参戦することにする。
「あ、そうだ。アレルヤ、こっち向け」
「え?何です?」
言われたとおりにした無防備な彼の頬に、ロックオンは素速く口を付けた。
「………え…………えぇぇぇぇっ!?」
「さっきのの、お礼な」
ウインク付きで、赤くなって慌てる彼に言うと、後頭部を刹那とハレルヤに殴られた。