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「やられましたね……」
「オイオイ、こいつぁ、生き残りなんざいねぇんじゃねぇのか?」
「でしょうね。残っているのは別な場所にいた、貴方たち傭兵だけでしょう」

 言いながら、足下に落ちていた木の枝を踏む。
 パキ、と音を立てて折れたそれには、もう水分といえる物は通っていないように思える。乾ききってしまったかのような状態だ。

 見れば、前方でも似たような光景が広がっていた。木の枝と違うところはただ一つ。対象が植物ではないというその点だけだ。

 水成分の無い武器や防具などは無事かと思えば、どうやら世の中そうそう上手くはいかないらしい。あちらこちらに溶けて固まった様子の鉄が見える。その元が何だったかさえ不明な鉄屑の中に、煌びやかな宝石などが混じっており、それを手がかりに原型を想像することは出来た。

 例えば、この円形の焼け野原の、中央付近のあの溶け固まった鉄。微かに表面の見えるあの宝石は、つい先日にとある狩人が見せびらかしていた剣に付いていたものだ。あちらの物は、殺した異端から奪い去ったと自慢げに話していた男のネックレス。

「獲物は…さすがに大物ですね。慈悲も容赦もない」
「そんなわけじゃあ、無いようだがな」
「……?それは?」

 隣を歩く傭兵部隊の隊長に目をやる。ここまでの参上を引き起こされたというのに、慈悲でもあるというのだろうか?情けは?

「こいつら、苦しまずに逝けたんだろうよ」
「つまり何です?一瞬で燃やされ、一瞬で死に絶えたと?そう思う理由は?」
「さあな。単なる経験豊富な蔵人の勘ってところだ」
「曖昧な……」

 だが、こんな状態だ。そんなものでもないと判断のしようは無いだろう。手がかりも、探せばあるのかも知れないが……同様に、燃えてしまったと考えるのが妥当だろう。

 とりあえず、彼の言いたいことは分かった。確かに、変に苦しんで死ぬよりは、そちらのほうが救いはあるだろう。何が起こったか知らない間に。ある意味不幸で、ある意味幸福な終焉だ。

 誰かは分からないがなぜ、そんなことをしたのかと考えてみると……案外、そういう考えを持っていたのかも知れない。その人物は自分たちの『敵』で、だから狩人達の命を奪うことを仕方ないとしながらも、それでもせめて楽に……と。

 まだ、火が消えて間もないようで、円の中にはいると熱気が襲ってきた。熱いが、それでも何か使える物があったら取っていくべきだろう。使える物は使う。

 一通り廻ってみたが……やはり何もない。あるのは使えない鉄屑、乾ききった枝、それから、灰。

「収穫はあったか?」
「ゼロです。徹底的ですね」

 ここまでの火力を一瞬で出せたのだとしたら、何という強大な力か。
 近くに潜む気配がないかと探りながら、リボンズは円から出た。

 そして、その瞬間、風が吹いて。

 巻き上がった灰を眺め、実感する。
 これだけの狩人の命が、一瞬で……あるいはリボンズたちがここ離れていた短時間で、消えてしまったのだ。

 別に人間が何人死のうと何とも思わないが、それでも、ほんの少し、思うところはあった。死人に対してでなく、力を行使した相手に対して。

 太陽の光を受けて煌めいている灰を見ていて、二人は気づかなかったが。


 鉄屑の影で、黒い炎が微かに存在を示し、消えた。
 

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