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 リボンズには、目の前の人間が行った言葉が信じられなかった。
 彼は今……何と言った?『魔王はいない』と口にしなかっただろうか?
 そんな馬鹿な、と思う。もしもそれが本当なら、ここまで来た意味もない。労力を無駄にした……としか言えないではないか。

 だが、彼の言葉にはどこか確信めいた、否、それを事実として知っているような、そんな響きがあった。表情もまた然り。ということは、つまりは言うとおり『魔王はいない』のだろう。あるいはそう信じ込んでいるだけの可能性もあるが、今まで話して彼がそういう人間ではないというのは分かっている。現実をしっかりと見ることができるタイプだ。

 果たして『いない』というのがこの場所に、なのか世界中を巡っても、なのかは分からないが、少なくともここには『いない』と考えるべきだろう。世界の方は彼には確かめようがない話だ。

 とすると、再び魔王についての捜索を開始しなければならない。世界の中に、というのはハッキリ言うと有り得ないのだ。魔族がいる以上、魔王は存在しなければならない。何故なら、少数である魔族には庇護者たる魔王が必要だから。そのために、いつしか生み出された存在が魔王なのだ。

 月代と違い、普通の魔族には特有の力というモノがない。ほとんどは異端のモノと同様である。だからこそ、あの白髪の少女は動けはするが力は使えない。つまるところ、魔族は魔族と形容されながら、異端と強さはほぼ変わらないのだ。したがって、異端が攻めてくれば、あっと言う間に消え去ることとなるかも知れない。

 それを避けるために必要とされ、生まれてきたのが魔王である。ソレは特有の力……使いようによっては世界征服なんてものが、いとも容易く実行できる力を持っている。
 リボンズの目的は、その力を『映し取』って後、魔王を殺すことにあったのだが。

 しかし、それが現在できないとなると、隠れ蓑は必要となってくる。
 アレハンドロ・コーナーの従者、という隠れ蓑が。

「どうする?俺は人質を解放、君は撤退。どちらにも損なことは無いと思うが」
「確かに……目的を果たせないのなら、ここにいる必要は無いのでしょう…ですが」

 すっと、リボンズは彼と目を合わせた。
 彼は、怖じることなく視線を逸らさない。

「月代を知っている貴方を生かしておくべきか。殺してしまったら交渉決裂、でしょう?」
「それはそうだろうな。安心しろ。君たちのことを好きこのんで言いふらしたりはしない。完全秘密主義の月代の事を話せば、話した相手にも危険が及ぶからな」
「分かっているようですね」

 ならば、生かしておいても大丈夫かも知れない。いざとなれば彼の言うとおり、関係者を全員、亡き者にすればいいだけの話である。多大な手間が掛かるかも知れないが、別に、月代は一人ではないのだ。分担すれば済むことである。

 しばらく熟考し、リボンズは提案を受け入れることを決めた。彼の言うことは信じても支障はないだろう。おおよそが、真実だと推測できた。

「仕方がないです。呑みましょう、その提案」
「フン……話が早くて助かるな」
「あの少年が変なことさえしなければ、僕の絶対有利で話は進んだんですけどね…」
「もしもの話か?起こりえなかったことを考えても、あまり実になるとは思えないがな」
「同感ですよ」

 答えながら、今更ながらに思う。
 ここは血の海。斬殺死体が溢れている場所。日常とは違う非日常。
 戦いに集中している少女二人、場慣れしていそうな動けない様子の男が一人、気絶しているのも一人、ぐったりしていて周りの見えない少年一人、そして、平然と死体を踏みつけて立っている人間の彼。
 この中で一番異様なのは、彼だった。

 まぁ、そんなことはどうでもいい。隠れ蓑のために必要なアレハンドロを、今は確保するために行動を起こさなければ。
 くるりと、リボンズはアリーの方を向いた。
 だから、彼の唇が動いたのに気づかなかった。


 ——魔王は『存在しない』。だが、誰が『いない』と言った?
 

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