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(どっちかっていうとだけど)ツッコミとツッコミの対談は、何か書きづらいなとか思いつつ。
そういえばこの二人って幼なじみですよね。
11:カスタネット
突然の来訪者を招き入れ、一応は『客』なので菓子やら飲み物やらを用意する。
その用意した物をお盆に乗せて、彼を置いておいたリビングに来てみれば…その直ぐ隣に赤と青の色をしているカスタネットが一つ、ポツンと残っていた。
これは、みねばのカスタネット。Vガンダムたちが来るつい先ほどまでは、ずっと彼女はここで遊んでいた。出る前に片付けを自主的にしていたのだが、どうやら一つだけ見落としてしまったらしい。机によって作られた影の部分にあったので、それで見落としてしまったのだろう。
手に持っていた物を机に置き、カスタネットをヒョイと拾い上げる。あんな場所にあっては忘れてしまいそうだ。気づいている内に、とそれをお盆の隣に置いた。
それから腰を下ろし、頬杖を付く。
「…訊くが、用はあるのか?」
「無い。暇だったからな」
「予想は付いていたが…本当にそうなのか…」
シャアの言葉に嘘はないと認め、キュベレイは溜息を吐いた。いくら旧知の仲とはいえ、暇つぶしのためだけに来てもらっても困る。いや、自分に困ることはあまりないが、仮にもじおんのリーダー格がフラフラしていたら問題だろう。普段ならまだしも今は原因不明の緊急事態、その真っ最中である。
まぁ…。思いながらグラスを手に取る。
大騒ぎしていたのは昨日の気づいた瞬間くらいの物で、その後はあまり異変前と変わらなかったのも事実。こうやってのんびりしていても構わないかも知れない。
「そういえばララァは?」
「色々見て回る、と言って出て行ったきりだ。帰ってくる素振りすらない」
「いや、それは知っている」
昨日本人に電話で言われた。
「私が訊きたいのは、どんな容姿だったかだ」
「それは当然、誰よりも美し…」
「分かったもういい」
何となく続きを理解したので、続きを言わせまいと言葉を挟む。
こういうとき……放っておくとそれはもう長い褒め言葉の数々が出てくるのだ。聞いていて鬱陶しいと感じるほどに。
昔はちゃんと聞いてやった事もあったが、今ではだいたい予想が付くので途中で切らせてもらっている。それが一番の対応だと悟ったのは、果たしていつだっただろうか……。
「相変わらずのバカップルだな」
「それほどでもないぞ」
「それほど過ぎるから言っているんだ」
眉間を揉みほぐしながら答え、ふと、シャアがこちらをジッと見ていることに気づいた。
何だ?と思いながらグラスを机に置く。
「どうかしたのか?」
「想像したのとは違うと思ってな」
何が違うのかは、彼の視線の先を見れば容易に理解できた。
……ので、思わず半眼になる。
「どんなのを想像していた?」
「割烹着が似合う様な顔かと」
まさか、ここまで若い容姿だとはな。
そう言いながら何度も頷く彼に、思わず掴んだカスタネットを投げつけたのは、決して自分が悪いとかそういう事はないだろう。むしろ悪いのは相手だ。別に気にはならないが、それでも言われれば多少は思うところがあるわけで。
投げたカスタネットは、綺麗にシャアの顔面に吸い込まれていった。
ふらりと仰向けに倒れた彼は素速く起き上がり、恨みがましい瞳でこちらを見ていた。が、ハッキリ言うと……どうでもよかった。投げてしまった物の方が心配だったくらいである。何せ、あれはみねばの所有物なのだから。
「何をす……」
「やかましい!お前の胸に手を当てて考えてみろ!」
「私は単にキュベちゃんの顔について正直に感想を述べただけだ!」
「その正直さがいけないと、どうして気づかない!?」
「正直で何が悪い!」
…そんな調子で言い合いが続き、終焉を迎えたのはそれから数十分後のことだった。
みねばちゃんに、二人の言い合いが見られなくて良かったと思う。慣れてる気がするけど、教育上は良くないよね。慣れてる気がするけど……。
ていうか、実はみねばちゃんが一番人間できてたりして。