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そこは、先ほどの部屋とは違う場所だった。
ぐるりと見渡してみる。山のように積まれた箱、ほこりを被った使わない家具、放られている料理器具、紐で縛ってあるたくさんの本、何の用途があるのか不明な道具、布の掛かっている縦長の板……否、鏡。
「地下の物置か」
「そうなのか?」
「…………はい」
確認するように言えば、帰ってきたのは問いかけと、微かな肯定。
ん?と思って振り返ると、丁度、自分の真後ろに片割れがいた。ハレルヤの背に隠れるかのように小さくなって、服をギュッと掴んでいるさまは……怖い何かを見ている幼児のようで、そういえばと思い出す。
アレルヤは、ヴェーダと呼ばれるあの鏡が苦手なのだった。理由は知らないが、ある時を境に全く寄りつかなくなった。ある時……あの、忌避すべき日の後から、ずっと。鏡があるからだろう、地下は掃除にさえ来ようとしない。……ので、仕方なくそこはハレルヤとティエリアが順々に掃除に行く。といっても自分はあまりやる気がないので、ティエリアに押し付け気味だが。
このままいけば多分、片割れが鏡を苦手としている理由が分かる。
別にわざわざ知らなければ、という内容ではないものの、もしものためにある程度は知っておいた方が良いだろう。何よりも興味があった。
…それよりも。
「アレルヤ……いい加減手ぇ離せ。服が伸びるだろーが…」
「う………ゴメンね?けど、あの、何て言うかその……」
「どうしても何かを掴んでたいならアレルヤ、俺の服でも、」
「やっぱいい。お前はそのまんまいろ」
いけ好かない狩人の言葉を切って、ポン、と軽く片割れの頭を叩いた。
服が伸びるのは遠慮したかったが、だからといってロックオンの服を掴ませるのも気に入らないというか。そんなことになるくらいなら、このまま自分のを掴んでいて欲しいわけだ。多少、服が伸びるのは仕方がないと諦める。
にしても、どうしてここまで苦手にしているのだろう。これは苦手を通り越して既に『怖い』の域に入っている。『嫌い』でなさそうなところは片割れの人柄故かもしれない。彼が嫌いと明言したのは数えるほどしかなかった。
「ハレルヤ……ありがとう。戻ったら君の食べたいもの作るから」
「おー……って、そういや今、時間はいつ頃だ!?時間間隔が綺麗サッパリ無くなってんだけど…」
「あ……どうなんだろ。…ロックオン、分かりませんか?」
「お前らに分からなくて、どうして俺に分かるっていうんだよ……」
確かにその通りだった。今は特殊な弾丸を持ってはいる彼だったが、結局は単なる人間。こういう奇妙な状態では、ほとんど役に立たないキャラだ。いや、役立つこともあるのだろうが…そういう情景が浮かんでこない。
実際、アレルヤが分からないのに自分が分かる、というのも無理な話ではある。ここは片割れの領域であり、自分の領域ではない。彼に分からない物が自分に分かるはずもないのだ。そんなことが出来たら、何か問題があるとも言えるのだし。
つまるところ、全てが終わらない限り分からない、ということなのだった。
ならば保留にしておくしかない。この話題はここで打ち切りだった。