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分かり難いような、易いような。
今回はそんな感じです。
17.人違い
見たことがあるような気のする、後ろ姿。
それが誰なのかを確かめるため、近寄ってみたいけど。
間に走っている亀裂が、歩みを阻む。
その亀裂は彼女と自分の間に、不思議な距離を作り出していた。
誰なのかをちゃんと把握するには遠すぎて。
誰なのかを気にしないですむには近すぎて。
ただ、彼女の後ろ姿を見つめるしかない。
ああ、とアレルヤは思う。
貴方は誰ですか、と訊くことができればいいのに。
そうすれば、相手は答えてくれるだろう。
けれど、ハッキリ声が届くには遠すぎる距離が。
両者の間に存在している。
だから、仕方がないから心の中で呟くの止めるのだ。
貴方は誰ですか?
どうしてこちらを見ないんですか?
僕と、どこかで会ったことはないですか?
……だが、それが音になって口から出てくることはない。
届かないから。言っても、聞こえないだろうから。
それを歯がゆく思いながら、じっと彼女の背中を見つめる。
誰なのかを、知るために。
無駄なのは分かっている。こんなことをしても、何も収穫がないことくらい。
それでも、やりたいと思うのだ。
彼女は、あるいは『彼女』ではないか……と考えるから。
もちろん人違いである可能性の方が高い。
だとしても、ハッキリと分かるまでは。
それまでは観察を続けていくのだろう。
何時になったら、真実は目の前に現れるのか。
そんなことを思っている内に風が吹く。
裂け目の向こうの彼女の、白い長髪がゆらゆらと揺れた。
両者に何らかの関係性があることは判明しているので、少しぼかした感じで。
今回はマリー……もとい、ソーマでした。