[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
136
気づいたときには、周りの風景が一変していた。
延々と続く廊下ではない。そこは、大きな教会の内部だった。
「えっと……これ何?」
「ここは俺も来たことねぇけど…ま、害はねぇから心配すんな」
「ってことは何だ?お前、ここが何か分かってんのか?」
「ここは…庵、ですよ……」
眠たげな声が耳に届き、ついと視線を向ける。
そこには眠そうに瞳をこすっているアレルヤがいた。欠伸をしたりしていることから、もう少し眠っていたかったろうことが推測される。
「ハレルヤ……下ろして…頭に血が…」
「足下フラフラが何言ってんだよ。下ろさねぇから」
「だいじょーぶだよ……」
大丈夫ではなさそうだった。先ほどの暴走(?)のせいではなく、頭に上った血のせいで。いい加減、下ろすか運び方を変えるかした方が良さそうなのだが。
そこは分かっているのだろう。下ろす気のないハレルヤは、黙ってアレルヤの体勢を変えた。抱えられている体勢でなく、横抱きにされる体勢に。いわゆるお姫様だっこ。
一瞬、思考が止まった。
「……っ…ハレルヤ!良いから下ろしてっ!これ恥ずかしいからーッ!」
「んじゃ、抵抗でも何でもどーぞ?どうせ体に力入ってねぇだろ」
「うっ……」
図星だったらしい。押し黙るアレルヤを見て、ようやく頭が活動を再開する。
あれはそうだ、単なる双子の戯れであり、それ以上でもそれ以下でもない。そうに違いないというか、そうであって欲しいというか……いや、というかどうして自分はこんなことを考えているんだろうか。
ぐるぐると回る思考を一旦シャットアウトし、二度目の再起動を行ったときには冷静な頭が戻ってきていた。色々と、質問したいことも。
「なぁ……庵、っていうのは何だ?」
「僕らが勝手に呼んでるだけで、実際はそんな物ではないんですけど…小部屋、みたいなものだと思ってくれると」
「っても王様限定で使用できる小部屋だけどな」
「王、ねぇ……」
そこら辺は、アレルヤから事前に説明を受けているので理解は出来た。
魔王は二つに分かれてしまった。力も二分され、魔王を形成する二つの物も分かれてしまった。心……即ち『魔』の部分と、形……即ち『王』の部分に。
といってもこの分け方は、三人で考えた物らしい。考えた末、こう思うのが一番しっくり来たのだそうだ。
変身癖とも言えそうな姿の変貌は、それ故なのではないかと彼は話していた。形を受け継いだ自分だから、それ相応だともいえる姿になる。自分の意思も関わっているから、それは尚更に……と。
「庵はたくさんあって、色々な役割を持ちます。先代の魔王が何かを残していたり、自分も隠し物を出来たり。共通することは一つで、必ず『外』のどこかに繋がっていること」
「ってことは出れるわけか」
「多分な。どこに出るかは知らねぇけど」
それでも出れるのなら、それほど嬉しいことはない。どこに出たとしても、裂け目を使って行けばいいだけの事だろうから。
「じゃあ行きましょう……ところでハレルヤ」
「ん?何だ?」
「背負うとか、他の選択肢を取って欲しいなぁ、とか……」
「却下」
「え…酷くない!?」
……そんな二人のやり取りがおかしくて、ついつい笑ってしまうと、咎めるような視線が向けられた……のだが、顔が赤いせいで攻撃力は皆無だった。