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教会の扉をロックオンに開けさせて、先に行かせてからハレルヤは外に出た。両腕の上には相変わらず横抱きされたアレルヤ。既に諦め気味らしく抵抗はないものの、しかし表情は憮然としていて彼の心情が容易に分かる。
そして、教会のような小部屋からは見えなかった、出た先……そこは屋根の上だった。
町の中心にある、高い時計塔の。
「って…どうぇぇぇぇ!?」
「焦るな茶髪。落ちても死なねぇから」
「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!これは絶対に死ぬっての!」
「あ、俺らは大丈夫って意味な」
「俺は!?俺の安否は!?」
叫ぶ煩い狩人から視線を外し、無言でしがみついている片割れを見た。若干青ざめているようで、微かに震えている。
どうやら……怖いらしい。
「お前……わりと屋敷の屋根の上に上がってなかったか?」
「あぅ………そうだけど…けどね、けどここは高すぎ…っ」
「ま、こんなとこに上ったことはねぇしな」
少し屋根の縁に近付いてみれば、さらに力の籠もる手。
……分かり易くて面白い。
「てかさ、お前、別に後付のあの力使わなくても、重力操作できるんだし」
「あ、無重力にすればいいってか?確かに問題ないよな」
「怖い物は怖…ちょっとハレルヤそっち行かないで!下が見える!見えるから!」
「いー眺めだぜぇ?お前も見てみろよ」
「いやだってばっ」
「止めてやれよ……」
大分、この風景に慣れたらしいロックオンが呆れた風に言う。まぁ、慣れた……といっても出来る限り縁に近付こうとしない所、まだまだだと言えるかも知れないが。それでも最初よりは。結構な順応性だと思う。ちなみに褒めてるわけではない。金をもらってもこの狩人のことは褒める気はない。単なる事実である。
「で……どうやって降りるんだ?」
「ソーマちゃんに迎えに来てもらおうかな……」
「何なら俺が裂け目作るけど?あの女に頼るってのは気に入らねぇし」
「けどハレルヤって、変なところに出口作るじゃないか……」
全くどうして、と溜息を吐く片割れ。
何故か?決まっている。その時の彼の反応を見るのが楽しいからだ。それはもう豊か過ぎるほど豊かな反応を返してくれるので、何回やっても飽きないのである。
だが、今回に限ってはそれは止めた方が良いだろう。疲れ切っている片割れに、これ以上の負担はさすがに不憫というか。もちろん彼以外がこんな状況だったら、むしろ嬉々としてやるのだが。
「安心しろって。今回はちゃんとやる」
「本当……?」
「嘘じゃねぇよ」
言いながら屋敷の玄関先に繋がる裂け目を作る。
入るようにロックオンを促して、少し呼び止める。言うことがあった。
「何だ?」
「いいか?魔王だとか何だとか、さっきまで見たこと聞いたことは他言無用ってやつだ」
「僕も……そうしてもらえたら嬉しいです」
「了解」
その一言を残して裂け目に入っていった狩人を見送り、ハレルヤはアレルヤを読んだ。
どうかした?と言う片割れに一言。
「もう、誰かを殺すなよ」
「……やっぱり都の狩人達のこと、気づいてた?」
「当然。お前、嘘下手だしな。眼鏡も気づいてると思うぜ?」
「そっか……黙っといてくれる?」
「別に良いぜ。これ以上、勝手にやらかさないならな」