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「良かったのか?」
「悔いは……無いよ」
夕食後、ティエリアは自室に戻っていた。
そこにアレルヤが尋ねてきたのはいつ頃だっただろうか…。
「にしても……よく決断したな」
「まぁ、なし崩しって感じかな…洗いざらいロックオンには伝えてしまったし」
「だからといって…」
肩をすくめる彼に、どうしようもなく呆れの感情を抱く。
…今話しているのは、夕食の席でのとある告白のことだった。
席には、自分たち館の住人が三人、近所の子供こと刹那、付き合いの長いソーマ、それから三兄弟にロックオン……挙げ句の果てにあの逃亡者までいた。
その場で、彼は今回の出来事のあらすじを伝えた。
全ての異端の力を使えるという…自分の特殊性も含めて。
……おそらく、ハレルヤは前もって知っていたのだろう。あるいは予想済みだったのか。とにかく彼は何も語らず、ただアレルヤの言葉に耳を傾けていた。
それを見て、ティエリアも腹を括ったわけだ。
「いいじゃないか。魔王のこと全般は話さなかった。月代のこともね」
「当然だ。それを話してみろ…ただでは済まさないぞ」
「……怖いよティエリア……」
「本気だからな」
それは、本当に言ってはいけない事項だ。知れば、否応なしに引きずり込まれる。ヨハンには『書き換え』については話した……が、あれも本当はタブー。彼には隠していたところでどのみち知られそうだったので話したが、あの判断は正しかったのかと今でも考える。もしも誤りならば、憐れな被害者が誕生するだけだが。
だが、言いたいことはコレではなかった。いずれコレについては彼が誰かに言う日が来るだろう事は、昔から分かっていた。その人数が多かっただけのこと。ただ、それだけのことなのだ。言及するまでもない、定まっていた事実。
言いたいことは、別にあった。
「アレルヤ・ハプティズム……ソーマ・ピーリスと刹那・F・セイエイに何を渡した?」
「あ……ばれてたんだ…」
「俺の見間違いでなければ、あれは魔石…その効力は」
———記憶の受け渡し
そう呟くと、彼は敵わないな…と苦笑を漏らした。
「その通りだよ。あれの中には僕の記憶が入ってる」
「何故、そこまで情報を開示する?あれには禁忌の記憶も入って…」
「うん、入ってる。君が知らないことも入っているよ」
だから、と。
そう言って、彼はティエリアの手を両手で包み込んだ。
その手が離れた後、包まれた手のひらには透明な結晶…魔石があった。
「君にも。ハレルヤとロックオンには見られたから…あとは君だけ」
「……答えろ、アレルヤ。何故、ここまで俺たちに過去を伝える?」
すっと目を細め、ティエリアは微笑むアレルヤに問いかけた。彼の変化を望んではいた……だが、これはあまりに急激すぎて、自分自身がついて行けない。理由を聞かなければ納得できそうもなかった。
それが分かったのだろう。笑みをさらに深くして、彼は瞳を閉じた。
「それはね……助けて欲しいから」
「何?」
「もしもの時は僕一人じゃ、どうしようもないんだろうなぁって…そう思ったから。過去の悪夢から助けて欲しいなら、罪に立ち向かうときには支えて欲しいなら…伝えないと」
我が侭なお願いだとは分かっているよ……ねぇ、君は助けてくれる?
そう訊いてくる瞳を認め、ティエリアはフッと笑い、答えた。
当たり前だ、と。