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いなくなって後からスタート。
「居たか!?」
「いや……こちらには居ない。一度、戻った方が良いだろう」
曇ってきた空を見上げながら言う。雨が降ってきそうだった。
「雨が降るな……アイツ、ちゃんと傘は持っているのか……?」
「そんな心配をする暇があるのならば、一秒でも惜しんで探せばいいだろう!」
「…そうしたいのは山々だ」
しかし、それをしてしまうわけにはいかない。そうするとバラバラになり、さらに言うとこの状況でバラバラに探せば、見つかる可能性はいっそう低くなる。それは不本意で、速く見つけるためには連携という物が必要になってくる。たとえ……
……たとえ、今すぐにでも駆けずり回って、いなくなった仲間を探したいと思っていたとしても、だ。
だから、その気持ちを押し殺すためにこういう言葉しか紡げない。紡ぐしかない。
本心からの言葉を口にした瞬間に、きっと思いは溢れ出る。連携も何も関係なく、とにかく走って飛んで駆けて回って、とても大切な、いつの間にか相棒といっても間違いではないほどの仲になった、あの死神を探そうとしてしまうだろう。
けれど、それは遠回りなのだ。
出会う道の仲で一番の遠回り。
そして、遠回りはしたくない。
それに気付いたらしい。ハッとした表情を浮かべて、それからつい、とナタクは顔を逸らした。
「…すまん」
「いや…俺も同じ気持ちだからな。お前が言ってくれて助かる」
実際その通りで、代わりに言ってもらえたようで少しばかり気持ちが楽になった。
とにかく、とサンドロックとヘビーアームズが残っている場所へと向かおうと、二人一緒に歩みを再開させる。
「……おそらくだが、デスサイズは一人で、自分の意思で出て行ったんだろう」
「そう思う根拠は何だ?」
「ここのところ、様子が変だった」
お前も知っているだろう?
そう問えば、返ってきたのは首肯。
「特に夜……だな。『仕事』で帰ってくるのが遅くなった日には、必ずといっていいほど何かを考え込んでいた」
「何かを考え込んでいた、か……オレにはむしろ、思い詰めていたように見えたがな」
そんな言葉を返したナタクを、思わずウイングは呆然と見てしまった。
何だ?と不思議そうな顔をする彼に、そのまま一言。
「お前も色々と見て考えていたのか……」
「よし、ウイング。この騒動が片付いたら手合わせ願おう」
「遠慮する。命がいくつあっても足りそうにない」
「自爆魔が何を言っている?」
と、ここで気持ちを平常へと持って行くための軽口のたたき合いは終了。真面目な話に戻ることにする。
「…とにかく、だ。これらの状況から『自分の意思で』というのは確定したような物だ。誰かに連れて行かれたという線は無い。アイツは強いからな」
「確かに。オレも一度背後を取られた」
「…確実に連れて行かれた線は無いな」
ただ…だから大丈夫だとか、そういう話ではない。
一人で何も言わずに出て行ったということは、つまりは家出…あるいはそれに類する物だろうが、このままではおそらく彼が帰ってくることは無いだろう。最近のデスサイズの様子は、その事を何よりも雄弁に語っていた。
では、それが指す事実とは何か?
……簡単なこと。
見つけて欲しくないのだ。
隠れて隠れおおせて、そのまま絶対に見つからない所へと行くつもりなのだ。
見つけて欲しいのなら手がかりでも置いておけばいい。なのにそれが無い上に、そこに彼がいたという痕跡すらキレイに消されているとなると……見つけて欲しくない、会いたくないと思っているであろう事は容易に想像が付く。
だとしたら、デスサイズはとにかく隠れるだろう。
見つからないよう、出会わないよう隠れるだろう。
出会う気がない相手に出会おうとするのなら、相手の行動の裏をかいて先手を打たなければならない。そこまでしないと会うことは殆ど不可能だ。奇跡に近い偶然でも起こらない限り、絶対に。
彼のためを思うのなら、もしかしたら探さない方がいいのかもしれない。
だが。
「……デスサイズ、お前の思いなど知ったことではない」
「その言葉だけ取ると正義ではないが……まぁ、同感だ」
「オレが、オレたちが会いたい。探す理由はそれだけで十分だ」
それに……と、ナタクには聞こえないように呟く。
お前……一人は嫌いだろう?
じつは二人とも、数時間以上は探して回っている感じです。