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本部というか、居残り組の話。
そして推論。
『収穫は?』
「マグアナック隊を動かしているけど……見込みは薄いよ」
『やっぱり…』
その返事は、予想していた物と同様だった。
だからさして気を落とすでもなく、ヘビーアームズはポツポツと水滴が付きだした窓を眺める。
……本当なら、外に行って探したかったのに。
本来なら留守番役は一人で良かったはずなのに、と自分まで残ることになった理由を思い浮かべて、少し溜息を吐きたくなった。
いくら証拠を残したくないからといって……あれはないと思う。お陰で片付けにとても時間を食ってしまった。終わったのはついさっきで、ようやく誰かが住めるようなスペースになったとは……思う。ツギハギとかが残ってるけど。
だから、また住めるから、帰ってきて欲しいと思う。
いつも五人なのに、それがいきなり四人になるのは……寂しい。
「ていうかね、」
と、サンドロックの言葉に思考から意識を戻し、彼の方を向いて……後悔した。
今の彼は酷く不機嫌な状態で、キレる一歩手前というか……その、見ていて怖い。
そんなことをヘビーアームズが思っているとも知らず、サンドロックは繋がらないと知っているだろうに、携帯の通話ボタンを押しながら言葉を紡ぐ。
「何か悩み事があったんならボクらに言って、それで一緒に考えて、最後には解決してしまえば良いのに。何で一人で勝手に考え込んで思い詰めて思い悩んで行動起こしてボクらに心配を掛けるんだろうね、彼は…」
全く、それじゃあボクらの、仲間のいる意味がないじゃないか。
続けてそう呟くサンドロックも、どこか寂しそうに見える。
……あぁ、きっと、不機嫌なのは頼ってもらえなかったからではなくて、頼らせてあげることが出来なかったからだと、今更ながらに気付く。彼が、デスサイズが、簡単に自分からそんな『深いところ』にある悩みを打ち明ける事は無いのだから。
心配を掛けないように、という配慮からかも知れないが……逆に、とても心配になる。それを彼は……分かっているのだろう。
だから出来るだけそう言う場所は見せようとしてくれないのだ。
ならば…と、そこでヘビーアームズは首をかしげる。
何故、今回はここまでハッキリとした行動を起こしたのだろう?
『もしかして、悩みとかそういうのじゃなくて……別の何かとか』
「かもしれないね」
それを伝えると、返ってきたのは肯定だった。
しかし、その肯定には続きがあった。
「けど、どうせ始まりは悩みだよ。彼のことだし『ここにいていいのか』とか本気で考えてそうだよね……むしろいてくれないと困るのに」
『家事が滞る上に、みんな悲しくなって心配する』
「その通り。デスサイズは自分の価値を分かっていなさすぎるんだよ」
…だからこそ、こういうことを躊躇いなく行ってしまうのかもしれない。
納得だった。
「死神って、特殊な『仕事』だから…そこも起因しているかもね」
『その仕事に疲れた、とか?』
「さぁ?そこまではさすがに……」
『じゃあ、本人に確認?』
「その通り」
サンドロックはクスクスと笑った。
「帰ってきたら始めに問い詰めて、それから…」
『それから?』
「夕飯作ってもらう」
『そしたらデザートも欲しいね』
「あ、いいかも。じゃ、食べ終わったらみんなで寝ようか」
『一緒に?』
「一緒に」
『場所は?』
「そうだねぇ……片付けたデスサイズの部屋が良いな」
言われて、思い出したのは片付ける前の部屋の様子。
壁にも床にも穴が空いて、調度品は結構な割合で壊れていた部屋の様子。
まるで穏やかな時間を否定しているようで……いや、恐れているようで。
そのくらいの勢いでの破壊の痕を思い出して、多分、既に他の皆も思っているだろうことを思い浮かべる。
もしかして、彼は穏やかな時間が怖いのかも知れない。
皆、色々と考えていると思う。