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「都まで何日くらいなんでしょう?」
「ざっと一日間くらいか。まぁ、それもずっと揺られていればの話、だが」
「へぇ……それだけの時間分手配できるって、あのお二方、結構なお金を持っているんですね…驚きます」
「あぁ、あの二人は異端とも人間とも親しいからな、両方からよく仕事を任されるため、そうなっているらしい。私たちは追われる身であったから、あまりは知らないが」
「……凄い。異端と人間両方となんて…」

 向かい合って何やら話している沙慈とヨハンから視線を外し、ルイスは窓によって切り取られた外の風景を眺めていた。

 出来れば話に加わりたい。黙っているのは退屈で、何より自分の性に合わないから。
 けれど、出来るわけがない。今、ルイスの言葉は、喋る権利は、あの良く分からない異端によって奪われているのだから。

 自分自身のことでさえ思い通りに出来ないのが何とも悔しい。そのせいで沙慈に迷惑を掛けているのだから尚更のこと、全く、どうして不覚を取ってしまったのだろう。

 ケットーシーは、猫である。
 周囲の気配に敏感で、危険が近付けば直ぐに分かって反応できる。足も、どちらかといえば速い方だろう。

 なのに、気づけなかった。彼が目の前にくるまで、その存在自体を知ることが出来なかった……いや、違う。
 目の前に来ても、気づけなかった。
 まるで、彼から『存在』が抜け落ちてしまったかのようだった。

 これは、有り得ない事。生きている以上、在る以上は『存在』が無ければならないのだから。俗に言う『神が定めたもうた理』というやつだ。まぁ、神がいるかもしれない可能性は示唆されているらしいが、実際に視認したわけでもないらしいし、良くは分からない。別に知りたくもないが。
 なのに知っているのは、沙慈の姉がこういう話が好きで、収拾しているからだった。

 ……とにかく、あの異端の存在感の無さは異常であり、何かをしたのだろうと仮定できるわけだが……そこまで考えて、止める。
 ハッキリ言って、面倒だった。

 答えが出ないことが始めから約束されているというのに一体どうしてそんなことをしないといけないのかとか、そういうことは役目じゃないだとか、そもそも楽しくないしつまらないし面倒だし、沙慈にでも任せておけばいいのだとか……そういうことが頭をグルグルと回っている。

 つまりはそういうことで、担当ではないのだ。
 ……もちろん、少しくらいは考えるけど。

 あぁ、けど本当に。
 本当に喋ることが出来たらどんなに良いか……

「ねぇ」
「……?」

 唐突に呼びかけられ、ルイスはチラリと視線を向けた。
 そこには同じように席の端に座っている……ルイスの目の前に座っている異端、ネーナの姿があった。表情は呆れ…か。

「アンタ、表情暗いわよ?ま、色々あったみたいだし明るくってわけにはいかないんだろーけどさぁ……もう少し笑ったら?」

 これは……
 これは、つまり。

 元気づけてくれているのだろうか?

 それをじっくり考えて消化し、多分正しいだろうと分かったとき、ルイスの中に生まれたのは暖かな気持ちだった。
 だからその気持ちを示すために、ニコリ、と微笑む。
 すると彼女も笑った。


「そーそ、そういう顔が一番だって!」

 

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