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171


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 とある時、とある王国の、とある宮殿内で。
 一人の女性が、一人の別の女性と共にソファーに座っていた。
 彼女が手に持っているのは白い、線が等間隔に入っている紙……つまり、手紙だった。傍の机にはそれが入れられていたのだろう白い封筒が置かれている。

「都での…パーティへの招待状ね」
「それは見れば分かるけれど…姫様、いつの間に都に知人を?」
「あら、そういえば何時だったかしら」

 侍女の言葉に首をかしげ、まぁいいか、と気にしないことにした。いつ出会っていたのだとしても、今、ある程度は親しい間柄であるという事実が変わるわけでもない。したがって、あまり重要な問いではないと判断したのだ。

 日時の欄を見れば、割と今日から近い日付が記されていた。出席するためには、今日にでも出なければならないだろう。向こうへ着くまでの時間もあるし、あちらでの仮宿の手配も必要になってくるのだから。

 ただ、行くに際して一つだけ問題があった。
 この国の治安状況である。

「果たして、行って良い物かしらね……」
「最近は落ち着いるけれど、いつ暴動が起こってもおかしく無いわ」
「よねぇ…」

 あまり良いとは言えない国の様子に溜息を吐き、さて、どうすればパーティに出席できるようになるかと思いを巡らせる。
 つまり、都に行くことは彼女の中では確定事項だった。
 そんな思考を読んだのか、ジトッとこちらを見て、侍女が釘を刺すように言った。

「いいこと?今、ここで国を離れるのは大問題に繋がるの」
「分かっているわ。だからどうしようかと悩んでいるんじゃない」
「……行くこと前提で考えているその悩みが『だからこそ』なのね…」
「えぇ。だって常時なら、無視してでも行くわよ?」

 何せ、こんなに楽しそうなイベントなのだから。逃してしまっては損だろうと、そう思う。折角のパーティだというのに。

 だが、このままでは行けないのも事実である。
 うむぅ…と唸りながら考え、一つの案を浮かべた。

「ねぇ、私が都に行くってワザと、国民に知らせてみてはどうかしら?」
「何を……いえ…あぁ、それなら構わないかも知れないわね」
「でしょう?都の人たちには苦労を掛けるけれど」

 ワザと出て行くことを知らせればどうなるか。
 簡単なことである。暴動が起きる。ただ、それだけ。

 けれど、それによって『現行犯逮捕』が可能となり、クーデターを起こそうとしている組織の下っ端でも見つけることも出来るかも知れない。その組織に関しては幾つかの情報を持ってはいるが、まだまだ不足していると言っても間違いではないのだから……何か、手を打ってみても良いだろう。

 それに、都、つまり国から離れることによって暗殺も有り得る物となる。
 王宮の兵はこんなご時世だし気は抜けないし、こちらも王宮に色々と仕掛けている。そのためだろう、暗殺未遂もあまり無い。

 しかし勝手が違う都ならばと、そう考える誰かもいるに違いないのだ。
 華やかで防備も万全に見える都だが、そういう明るい部分が……光が強い分ほど影も濃くなるというもの。探せば暗殺者の一人や二人、簡単に見つかるだろう。

「そういうことならまぁ……許可は取れるでしょうね」
「でしょう?我ながら良いアイディアだわ。狙われている私自身を囮にして、反対勢力を一網打尽っていうのは」

 上手くいきそう、と微笑んでいると、ふいに行方不明の親類の顔が浮かんできた。
 何年も前にいなくなった、多分誘拐された弟分。
 彼は今どうしているのだろう?きっと元気だろうと、根拠のない確信はあるけれど。
 久々に、顔が見たいと思った。

 

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