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くー、と寝息を立てているキュリオスと、うつらうつらとしているエクシアを見ながら、ヴァーチェは何とか庵内に入れることが出来た球体二つ……そのうち紫色の方を解体していた。もちろん本人(?)の了承は得ている。
オレンジ色の方もいたが、何だか……その、妙な雰囲気を纏っていたので躊躇ってしまった。手が出し難いというか、出したら後が怖いというか…そんな感じの雰囲気。
……感じなかったことにしたが。
ちなみにそのオレンジボールはキュリオスと仲良くなって、今は抱き枕のように抱かれて休止モードに入っている。色が一緒だったから仲間意識でも持ったのだろう、多分。
「ヴァーチェ、あんま根を詰めるなよ?迎えだって今日来る可能性もあるし」
「今日は来ないだろう。向こうについて直ぐ、という体力が残っているのか?…何より、初日から俺たちを呼び寄せるチャンスが回ってくることは無いだろう」
「ま、そりゃそうか。どんだけラッキーなんだって話だからな」
台所に行っていたのだろう、こと、と幾つもの部品が広がっている机の空いたスペースにコーヒーを置いて、それからデュナメスは丁度向かいの席に座った。
「何か分かったことは?」
「動力源が見えた。おそらくコレだ」
言いながら示したのは、透明な色づいた石。球体の中央部分にあったものだ。
この石は小さいながらも多大な力を持っているようで、半永久的な活動を可能にしているとヴァーチェアは推測している。そして、有り余っているエネルギーでもっと別の何かを行えるのではないかと、とも。
ハロとHAROの性格が違うのは見て取っている。ということはどこかに性格を記録するメモリーがあるはずだが……見あたらない。となると、可能性はこの石にしかない。エネルギー供給だけでなく情報を記憶できるとも考えるべきだろう。
そして何より重要なのは、この石の属性を判別したところ、どうやら『魔』の力を宿しているのだと言うことで、知る限りでそれを生み出すことが可能なのはせいぜい、魔王と呼ばれる存在のみ。
ということで、この町にはソレがいるという仮定が成り立つ。
「オイオイ……推測が多すぎないか?」
「あぁ。だが、限りなく真実に近い推測だと思っている」
呆れたように言うデュナメスの手からドライバーを奪い取り、組み立てを開始する。
こういうのは好きだ。機器を解体して、組み立てるという行為。破壊を経て再生を果たすという行程。世界を壊せ、神を殺せ……そんな命令よりも、こちらのほうがよっぽど有意義だとさえ思っている。
嗚呼、あるいはそれもまた破壊の一端で、それを果たせば再生が待っているとでも言うのだろうか。両者を壊した後は新しい世界、新しい神が生まれる、と。
だとしたら面白いかも知れないが…生憎、自分は今の世界で満足している。壊してしまう気は毛頭無い。自分たちがどうなってしまうかも分からないのだから。
だから、興味はあろうとその先については保留だ。
「限りなく真実に近い…か」
「あぁ。それから、その魔王候補だが…俺たちを見つけた二人が怪しい」
「ちなみに訊くけど、主にどっちが?」
「…アレルヤの方か」
ただ、刹那の方も妙だった。
というか、二人とも妙だった。
何か特殊なことをしなくても、人間、異端、魔族、月代のどれに属している可くらいは分かるハズだったのだが……どうしても、あの二人に関しては分からなかった。近いモノは分かるのだが、どうしてもハッキリとしたところが見えない。
何なのだろうと考え、その後、ドライバーを回す手に意識を向ける。
止めた。直接会って訊けばいいのに、こんな思考は無駄以外の何者でもない。
ふと見れば、うつらとしていただけのエクシアも、いつの間にか熟睡していた。