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 それは、突然の出来事だった。
 アレルヤを探すために都を歩いていたハレルヤの頭に、聞き慣れた…というのは頭に直接のため妙かも知れないが、そうとしか形容できない声が響いた。

『ハレルヤ、』
(……ったく、お前、一体どこに居んだ?)
『倉庫。突然のことだったから、着地ポイントを設定できなくて……ここ、どこだろう?』
(ンなモン俺に訊くんじゃねぇよ…)

 当事者が知らないのに、どうして自分が知り得るというのだろうか。
 呆れながらも、何となくアレルヤがいそうな気のする方向へと足を進める。

(てーか、力、使ったのかよ)
『うん。丁度あの場所は機械の監視が無くて』
(嘘だろ。ンなご都合展開あるわけねぇ)
『…だよね。うん、『書き換え』ちゃったよ』

 さすがにバレバレの嘘だと言うことは分かっていたらしい。苦笑にも似た思念を受け取って、ハレルヤは溜息を着いた。分かってるなら最初からしなければいいのに。

(今回消えたのは何だ?)
『えっと…異端の力を全て使用する権限?』
(いつもよりはマシなモンが消えたな)
『でね、そのせいで一緒にいた人に僕の素顔を見られちゃった』

 その言葉の意味を捉えるのに数秒。
 捉えてから把握するのにさらに数秒。
 それから、直ぐ傍にあった細い柱を掴んで、へし曲げるのに数秒。

(…お前、それはつまり、)
『人間じゃないってバレたってことだね』
「のうのうと喋ってんじゃねぇッ!」

 周りの視線を限りなく無視して、ハレルヤは叫んだ…叫ばずにはいられなかった。
 都は人間の街だ。たとえそこに異端がいたとして、しかし正体さえ知られなければどうとでもなる。今の自分みたいに街中を歩いていたとしても、何の問題も無いし、起こるわけもない。……それ相応の振る舞いさえすれば、一応。

 だが、正体を知られたとなると。
 それは都で生活するという事において、かなりの致命傷だ。

「どんな手段でも構わねぇっ、そいつの記憶を飛ばしやがれッ!」
『落ち着いて、ハレルヤ…その様子だと普通に口に出してるよね、言葉』
「あぁ!?ンなこたぁどうだって良いんだよッ!」
『きっと、完璧に周りの人から変な目で見られてるよ…?…じゃなくて、大丈夫なんだ』
「何がだっ!?」
『その人、刹那の親類の人らしいから』

 その言葉を理解するには、約一分の時間が必要だった。
 そして、ちゃんと理解してから、一言。
 今度はちゃんと、口には出さずに。

(…そりゃ、本当に現実か?ご都合展開超越してんじゃねぇか…)
『というかね、そうなるキッカケを作ったのが彼女だから…』
(女かよ…で?何だ?…つまり、そいつが爆発に巻き込まれる予定だったのか?)
『そう言う事。そこに立ち会わせた僕は『書き換え』を行ってあの場所で異端の力が使えるようにって、機械が『無かった』事にした』

 ふぅん、と聞きながら、ハレルヤは会話の中に違和感を覚えて眉根を寄せた。
 彼の言う通りだとすると、まず『書き換え』を行って、その後に瞬間移動でも何でもやって逃れたと言うことになる……が、それは有り得ない。『書き換え』た後に失われたのは『異端の力を全て使用する権限』を失ったハズなのに、重力変化はさておいて、そちらの力が使えるわけがない。

 が、素顔を見られたと言うことは確かにその力は失われ、変身能力も無くなっているのだろう。自分からと言うのは、都での立場を把握している片割れに限って…有り得ない。

 ならば、この矛盾は?
 そう問いかけようとしたときには、アレルヤとの『通信』は切れていた。

 

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