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式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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ハロウィン小説です。
00で、ソレスタル・ビーイングで、ハロウィンの話。
いつもより、ちょっと(?)だけ長いです。ハロウィンだから気合い入ってるんですよね。
だってハロウィン好きだし。



「トリック・オア・トリート、ですー!」
「……トリートだ」
 自室のドアを開けてみれば、そこには魔女の格好をしたミレイナと、制服のまま箒を持ってその後ろに立っている刹那の姿があった。
「……何をやっているんだ、君たちは…」
「今日はハロウィンなので、お菓子をもらいに回ってるんです!」
「いや、そこは分かる」
 五年前からそういう行事には…何故か否応なく巻き込まれていたので、知識としてでなく経験として知っている。そしてその時のトラウマ故か、部屋にはビスケットが数点おいてあったりするわけだが。あと…トラウマのことは訊かないで欲しい。思い出したくない。
 とまぁ、そこは置いておいて。
 ティエリアはじっと刹那を見た。
「刹那……君まで回っているとは…」
「俺は菓子を持っていなかったからな……」
「トリックの代わりです!イタズラの代わりに仲間になってもらったです!」
「成る程」
 たしかに刹那なら、そのくらいの理由がなければ加わったりはしない。
「そういえば、誰の所を回ってきたんだ?」
「一番最初はイアンの所だったそうだ。次が俺で、ここに来る前にラッセの所にも行った。フェルトの所にも行ったらしい」
「いっぱいお菓子、もらったです!」
「…そうか」
 この調子なら、おそらく主要メンバー全員の所へ行くのだろう。
 ということは……
「よし、俺はトリックの方を選ばせてもらう」
「選ぶ物ではないが…物好きだな」
 驚いている刹那の視線はティエリアの背後……机の上のビスケットに注がれていた。菓子を渡してそこで終了、ということが自分は彼と違って出来るのに、こちらを選んだのがよっぽど予想外だったらしい。
 そんなことは思いもしないのだろう、ミレイナはどこまでも無邪気に笑って、被っていたトンガリ帽子を差し出した。
「アーデさんも参加したいですか?」
「あぁ。是非ともな。ただ……」
 帽子を受け取りながら頷き、一つの条件を出す。
 次の場所は……


 突然の来訪者に何だ?と首を傾げながらもドアを開くと、目の前には魔女の格好をしたクルーの一人で、名前は……そうそう、ミレイナという少女がいた。
「トリック・オア・トリートです!」
 その言葉と彼女の格好を見て、ライルはあぁ、と頷いた。
 今日はそういえばハロウィン。こんな組織にいても年中行事はやるのか。
 昔は良くやったものだが……と、ライルは軽く頭を掻いた。
「悪いな、菓子はねぇよ」
「…おぉ」
「ん?」
 落胆でなく感嘆の声を聞いて、ライルは訝しく思った。どうしてここで感嘆の方なのだろうか?前後が繋がっていないような気がするのだが。
 しかし、その疑問はミレイナの次の言葉であっさりと氷解した。
「アーデさんの予測通りですー!」
「アーデ?…ってあの、可愛い教官さんのことか?」
「その通りだ…と言いたいところだが、生憎、可愛いと言われて嬉しいとは思わないな」
 そしてドアの影からゆっくりと現れたセラヴィーのガンダムマイスターに、ライルは瞬間的にとてつもない警戒心を抱いた。何故かは良く分からないが……このままでは、何だか色々と大変なことになる気がする。
 だが、ここは割り当てられた自室の中。逃げ場所は…無い。
 どうするべきかと悩んでいるうちにティエリアが一歩足を前に踏み出し、それに対応するかのようにライルが一歩下がる。
 ジリジリと追い詰められていくのを感じながら、ミレイナの後ろに刹那の姿を見て、ライルは慌てて叫んだ。
「刹那だっけ!?お前、じっと見てないで助けろよっ!」
「…すまない」
 返事は、酷く申し訳なさそうな声音。
「俺はまだ……死にたくない」
「そういうことだ。諦めろ、ライル・ディランディ!」
「っ…誰が!」
 自分でも驚くほどティエリアの脇を綺麗に抜け、さっと避けて道を造ったミレイナと刹那の間を通り、ライルは廊下で爆走を開始した。ティエリアから逃げるために。
「待て!大人しくイタズラを受けろ!」
「イタズラで済むなら待ってやっても良いけどなぁッ!」
 追ってくるティエリアに、一言。
「生死が関わってんのに待つ気になれるわけないだろーがッ!」


「行ったな…」
「行ったです…」
 走り去っていく緑と紫の背を見送り、刹那とミレイナは顔を見合わせて頷いた。
 今のは……無かったことにしよう。
 気を取り直して。
「次は……スメラギ・李・ノリエガか?」
「はいです!ノリエガさんの所です!」
「呼んだぁー?」
「呼びましたです…え?」
 元気よく返事をしたミレイナの後ろにいたのは、戦術予報士である彼女だった。
 部屋でなくここにいることに少々驚きつつ、刹那はくるりと体を反転させる。
「スメラギ・李・ノリエガ、トリック・オア・トリートだ」
「トリック?……あぁ、そういえば今日はハロウィンねぇ…」
 フラリと揺れながら、彼女は赤い顔でふふっと笑う。
「ごめんね、お菓子はないわ」
「そうですか……残念です…」
「代わりにこれ、あげる」
 そしてスメラギが差し出したのは……酒瓶。
 え、と思ってソレと彼女を見比べていると、楽しそうにスメラギは言った。
「いいじゃない。刹那、一緒に飲みましょ?それに未成年でも一杯くらい…ねぇ?」
「未成年では良くはないし、俺は飲む気はない」
「いけずぅ」
 唇を尖らせてそう言った後、彼女は再びふらりと、どこかへ去っていった。
 大方、大声で叫び合って走っていったティエリアとライルが気になったて出て来たのだろうが……もう、興味はないようだ。


 食堂にあるキッチンで色々とやっていると、ふいに入ってくる誰かの気配を感じて、アレルヤはふっと顔を上げた。
「あ……二人とも?」
「トリック・オア・トリートです!」
「ハロウィンだ」
「うん、それは知ってるよ」
 二人が菓子を取りに来たのだと知って、アレルヤは微笑みを零した。
 何てタイミングの良い二人だろう。
 知っている、という自分の言葉が想定外だったのか、少し驚いている二人にオーブンの中を見るようにと示す。中にはきっと……良い物、と称される物が入っているハズだ。
「ケーキです!」
「カップケーキだけどね。折角のハロウィンだから、何か作ってみようかなって思って」
 それに、料理の腕が落ちていないかが心配でもあったので、その試しの意味も入っている。四年のブランクは大変な物かと思ったが……存外、そんなこともなく簡単にできた。我ながら驚嘆、である。
 というか何より、カップケーキを作るだけの材料がトレミーにあった……そのことが一番驚いた点かも知れない。毎日の料理は普通に機械がやっているようだし、まさか本当に揃ってあるとは思ってもみなかった。が、フェルト当たりなら作っていそうな気もするので、不自然な感じはどこにもない。
 おー、とオーブンの中を見るミレイナを視界の端に収めつつ、アレルヤは刹那にニコリと笑いかけた。
「焼き上がったら、お茶にでもする?」
「巡るのも一段落ついたからな…まぁ、それも良いだろう。…良いな?」
「全然大丈夫ですー!」
 顔を離さないままぐっと親指を突き出すミレイナを見て、刹那は呆れたように息を吐いたが、アレルヤは何だか楽しくなってクスクスと笑った。さっきから笑いっぱなしだけれど、どうしようもなく笑みが浮かぶのだから仕方がない。















「いっぱい収穫ですー」
 ガンダムの格納庫の中、ミレイナは満足げに手に持つ袋の中身を見た。
 今は、父が仕事を終えるのを待っているところだ。それで、終わったら中身を見せて事後報告、である。
 その時どんな反応があるだろうかと、楽しみだと笑っていると…
 上から、アメが降ってきた。
「…?」
 見上げてみると、上側の通路に立っている二つの影が視認できた。
 黒い短い髪と、オレンジ色の髪の……見たことのない人。
 そのうち黒髪の方の少年は、手すりから軽く身を乗り出したかと思うと、そのまま通路から飛び降りてきた。
「危ない!で…す?」
「危なくない」
 とん、と音を立てて降り立った少年は、そう言ってこちらを見た。
 結構な高さがあったハズなのに、至って普通に見える少年が不思議で、ミレイナは少しだけ首を傾けた。ここは無重力でなく重力下だというのに平然と……飛び降りれるようにと、頑張って練習でもしたのだろうか?
 などと思っている間にオレンジ色の髪の少年も飛び降りてきた。
 こうして並んだ二人をじっくりと見てみるが……やっぱり、知った顔ではない。ということはつまり、トレミーのクルーではないということ。
「誰さんです?」
「それは機密事項だ」
「えっと……名前は内緒、かな。あ、用事が終わったら直ぐに還るよ」
「用事、です?」
 何だろうと疑問符を浮かべている間に、オレンジ色の髪の少年が広がった袖の中から一つ、綺麗にラッピングしてあった小さな袋を差し出した。
「これ……えっと、ハロウィンだから……もらって、くれる?」
「くれるですか!」
 不法侵入者かと思ったらいい人だった。
 何となく感動して袋を眺め、ふと顔を上げてみれば…そこには、誰もいなかった。
「あれ?です……」
 幻のように消えた二人だったが、手の中にある小袋が、二人が確かにいたとミレイナに伝えていた。


(Trick or Treat!)



何気なく『Another Story ~00~』が介入。最後の段落の『還る』は変換ミスにあらず。

ミレイナに回ってもらいました。他の人たちはもう、そんなことするように見えなかったので…。なのに、やるように見えないのに巻き込まれる刹那はまぁ、刹那だし。彼なら付き合ってくれる気がしないでも…ない。
五年前、つまり一期のころにあったハロウィンはスメラギさん主催です。
たまには、こうやってほのぼのしていてくれたらいいです。
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