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記念すべきなんだろうか、とにかくライアレ初作品。
01.しぼんだ風船
「……お前、何やってんの?」
「あ、ライル…じゃなかった……ロックオンでしたね」
「ライルで良いよ。もうメンドイから」
日課となったケルディムでの射撃練習を終えて、さて部屋に帰ってのんびりとしよう……というところで、壁にもたれ掛かって座っているアリオスのマイスターを見つけた。
長細い風船で作られた、たくさんの作品に囲まれた。
うわぁ……と思いながら彼と作品たちを見比べる。
「これ全部、お前が?」
「暇なんですよね。やっぱり四年のブランクとか能力の低下とか色々と考えることがあって……それでアリオスに乗って練習しようかな、とか思ったんですが、」
「あぁ…そういや、今ってアリオス整備中だっけ?」
「そう言うことなんです。で、僕はここで待機中」
「成る程……とは言わねーからな。本でも読んで部屋でくつろいどけよ」
「無いですから、本」
さらりと告げられた言葉に、思い出す。
そういえば彼はつい先日に助け出されたばかりで、したがって私物なんて持っているわけもない。四年前もCBにいたそうだが、その際の私物は輸送艦の爆発に巻き込まれて無くなりでもしたのだろう。残っていたら教官殿が保管でも何でもしているはずだ。
だが。
「だからって、何で風船で遊んでんだ?どこにあったんだよ、ソレ…」
「ミレイナが持ってました。で、暇そうだからって道具と一緒にくれたんです」
「そんなに暇そうにしてたのかお前って…」
「えぇ。まぁ…」
苦笑しつつ、彼は一言続けた。
「捕まっていた間の感覚は曖昧だったから分からなかったけれど…一人って、こんなに退屈だったんだと初めて知りました」
「ふぅん…?」
彼の『初めて』という部分に引っかかりを覚えながら、風船で作られた犬を見る。まぁ、このくらいは基本中の基本だから出来て当然なのだが……何か上手だ。
「手先、器用なのか?」
「それ程でもないです。だってハレルヤの方が上手でしたし」
「ハレルヤ?」
誰だそれは?と首を傾げていると、ずい、と空気の入っていない長細い風船と、それに空気を送り込むための器具が目の前に突き出された。
何?と彼の顔を見てみると、浮かんでいたのは笑み。
「よかったらやってみません?」
「…一個くらいなら、付き合ってやらなくもないけど」
「じゃあ一個、付き合ってくれるんですね?」
差し出された器具を受け取り、彼の隣の風船を退けてから座る。
「オーソドックスに犬でいいな?さっき俺が手に取ってたやつ」
「何でも構いませんよ」
そう言って、彼はクスリと笑った。
良く笑うヤツだと思いながら、そういえば『ハレルヤ』に関して訊くタイミングが逃げてったな……と考え、何でコイツはこんなに笑っていられるのだろうかと疑問を抱いて、そして……。
「ライル、一つ訊きたいんです」
「何だ?」
「そっくりだけど違う物って、貴方はどう思いますか?」
彼のその問いに一瞬だけ動きを止め、再びライルは作業を開始した。
「そっくりだろうと違うんだろ?なら、違うってことでいいんじゃないか?」
「じゃあ……」
そして、彼はとある一つの質問をした。
数分後、ライルは一人で座ったまま、何個目かの風船作品を作成していた。
特に深い理由はない。強いて言うなら、自分に質問を残して去っていった『お仲間』を待つのに、何もしないでいるのは暇だったから…というところ。
その『お仲間』……アレルヤは、アリオスの練習に来た、というのは本当のことだろうが……ここで座っていた理由は……きっと今の自分と同じだったのだろう。つまり、アリオスの整備が終わるのを待ちながら、自分がケルディムから降りるのを待っていた、と。
理由は……一つの問いをしたかったから、だろうか。
「こんな質問、初めてだっての…俺になんて答えろっていうんだよ…」
溜息を吐き、答えが見つからないというのに、彼が再び来るのを待つ自分は律儀というか何と言うか。けどもまぁ…自分が待つ時間は彼が待っていた時間には遠く及ばないので、そこは押しとすることにしようか。
質問の少し前、思い、考え、疑問を抱いたときに見た、既にしぼんでいた風船を思い出しながら、ライルは苦笑とも付かない笑みを浮かべた。
『違うんだけど同一の物って、どう思います?』
ていうか、風船で遊ぶライルを想像すると、リアルに微笑ましく思えて来るような…?
アレルヤだったら言うまでもないですが。