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「機械、よく見える場所に設置してあったからさ…察知される前に普通に重力操作を使って潰しちゃったんだよ。そんなことに、さすがにあの力は使わないよ……ハレルヤ」
「あら……独り言?」
「…えぇ。ちょっとした、ですけど」
クスリと笑ってアレルヤは倒れている三人の方を見た。
……大丈夫、まだ眠っている。ソーマも、刹那も。
ならば、こっそりと言ってしまってもいいだろう。
約束のことを差し引いても、あまり話してはいけないだろう事柄を。
「…すみません、聞いてもらってもいいですか?」
「何を……と聞くのはヤボね。何かしら?」
「とある四人と、とある四人と……とある一人の話です」
呟いて、アレルヤはゆっくりと瞳を閉じた。
そして、語るように言葉を紡ぐ。
「とある四人は、大切な半身たちを捜していました。そして、その四人の半身たちもまた、とある四人を捜している。必死に、一生懸命に、何よりもかけがえのない半身と出会うために、努力を惜しまずに」
「素敵な話ね」
「けれど、」
けれども、この話には続きがあった。
とある四人も、その四人の半身たちも、誰一人として知らなかった事が。
おそらく気付くことが出来るのは、世界で二人しかいない事が。
「……けれど、その四人と、四人とは出会うことが出来ないんです」
「何故?探しているのなら、いつかは出会えるはずよ。たとえ何度すれ違おうと……必ず、諦めさえしなければ、きっと」
「普通なら、そうです」
では普通ではなかったら?
悲しげに微笑んで、言葉を続ける。
「しかし、残念ながらそれが為し得ることは…無いんです」
「どうして?」
「世界が、そう決めていたから」
世界とは即ち、この世の秩序そのものであり、ルール。
その世界が『会ってはならない』と、『会うことを許さない』と決めていれば……
たとえどんな努力をしようと、出会うことはない。
裏返せばそれは、出会ってはいけない『何か』があるということでもある。
きっと、あの八名が集まってしまってはいけない『何か』があるのだ。…世界にとって、もしも世界に意識があるとしたら、ありがたくない『何か』が。
それを、世界は恐れているのだろう。
「だから、いくら頑張ってみても無駄だったんです」
「あら、『だった』というのは過去形ね…ということは、今は?」
「それが話の続きですよ」
肩をすくめながら、微笑みを浮かべたままのマリナを見る。
彼女は聞いているだけにも見えるが、しっかりと、この話を理解してもいるようだった。
「とある場所に、とある一人があったんです。そして、その一人は世界のルールを知りました。知って、出来たからやったんです…ルールの変更を」
「そうなの……それで?」
「…その一人は迷っています。『書き換え』てしまって、良かったんだろうかって」
今回の物だけでなく、今までの全ての『書き換え』に対して、不安を抱いてしまった。
今までは事象に対しての『書き換え』で、思うところはあったがそれ程ではなかったように思える。だが……今回はルールにたいしての『書き換え』。世界に弓引いたともいえるのだ。だから、ここまで不安を覚えるのだろう。
目を閉じて口をつぐみ、彼女の言葉を待っていると…ぐいと体を引っ張られ、気付いたときには抱きしめられていた。
驚きながらも、その温かさに安堵を思う。
そして何となく…分からなかった、彼女に話してしまった理由が…分かった気がした。