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第四話から。ライルとフェルトの例のシーンの、その後の話。
一応…誕生秘話?的な物がありますが、まぁ、それは分かるとしても一人くらい。
分かったら凄いと思うけど…どうだろう?
01.一方通行
自分ことライル・ディランディは今、生まれてから約三十年間の人生の中で最大の危機に陥っていた。抜け出せないほど深く深く。
目の前にはセラヴィーのマイスター、ダブルオーのマイスター。その後ろにはアリオスのマイスターと抱えられたオレンジの球体、戦術予報士、桃色の髪のオペレーターと……ハロを入れれば計六名の姿が確認された。
そして、何故、最大の危機と称されているかというと…それは前方の二人が恐ろしい気を発していること、自分が壁際に追い詰められている事が理由に挙げられる。何かされそうなのは確実なのに、どうやっても逃げ道がないのだ。
ダラダラと汗を流しながら、話が通じそうな後ろの三名プラス一つへと視線を向ける。出来れば助けて欲しかったが…この状況では無理だろう。
「どうして俺ってこんな目にあってるんだ?」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ」
しかし答えたのは目の前にいる二人の内、刹那の方。
もう一人…ティエリアはと言うと……おもむろに足を上げた。
え?と思っていると、彼はそのまま…その靴裏をこちらめがけて繰り出してきた。
「死ね」
「うおっ!?」
慌ててしゃがみ、避けたから良いものの…見れば、その靴裏は軽くだが壁にめり込んでいて。
冷徹な視線を送ってくる相手を見上げて、ライルは叫んだ。
「殺す気か!?」
「…死ねと言ったのが聞こえないのか?」
「だから、何で俺が死なないといけないんだよっ!」
「心当たり、無いとは言わせないぞ」
教官殿の言葉に従い、何があったかとしっかりと考える。ティエリアだけでなく刹那、アレルヤ、スメラギ、フェルトというメンバーまで来て……フェルト?
もしかして、と思い、ライルは恐る恐る窺い立てるように口を開いた。
「もしかしなくても……あれか?そのこのお嬢さんとキスしたのがか?」
「そうよ。全く…そんなことして、ただで済むとは思ってないわよねぇ?」
「ただで済むと思ってないって何する気?ていうか目が怖いんですけど!?」
笑っているのにどこか冷たい空気を纏う女性に戦慄を覚えつつ、本当にここから抜けでないと生死の問題に発展するとライルは悟った。刹那はともかくとして、ティエリアの殺意が物凄い事になっている。
というか、落ち込んでいたときは分からなかったが彼女……良い性格をしてるらしい。
「てーか、その情報どこから漏れた!?」
「ハロ!ハロ!」
「お前か!」
「ライル、ヤッタ!ヤッチャッタ!」
耳をパタパタさせるオレンジ色の球体は、目を点滅させつつ言葉を続け……何か、面白がってる気がする。というよりも、皆をけしかけているような気が、しなくもない。
イライラしていたこともあって、あぁいう手段を取ってしまったが…やっぱりマズかったようだ。こんな状況では味方も出ない。
本気で大変なことになっていると理解したライルは、逃げ道を探すべく辺りを見渡す。味方がいないのはよくよく分かった。クルー全員が敵と見て良いだろうが、だからといって逃げ場が無いとは考えたくない。無いのは一目瞭然…なのだが。
諦めまいと、ゆっくり立ち上がって視線を走らせている中で、ふと、アレルヤが微かに震えているのが分かった。表情はうつむき加減なのでよく見えないのだ、が……。
嫌な予感がして、ライルは何の理由もなく左に飛び退いた。
結果。
彼が唐突に投げつけたハロは、先ほどのティエリアの蹴りよりもしっかりと壁にめり込んで、つい今までライルの頭があった位置に納まった。
衝撃で広範囲に出来てしまったヒビを頬を引きつらせながら、アレルヤの方を見る。
そして何でか、アレルヤは涙目だった。
「ライル、何て事したんですか!?キっ…キスなんてっ…」
「いや、そりゃ確かに悪かったけどな…減る物でもないのにこの待遇は…」
「減りますよ!減ります!何かいろんな感情とか思いとかが減っちゃいますッ!」
「…な、一つ訊かせてくれ」
「何だ」
答える刹那に、呆然と。
「何でこんなにコイツが怒ってるんだ…?お嬢さんでなくて…」
「アレルヤだから」
「へぇ、アレルヤだから…って納得しないからな!」
「皆が怒ってくれるから、私はそんなに怒っててもその…ね?」
「あー、成る程…」
「それはともかく、悪かったと思っているのか?」
「あぁ…悪いことをしたとは思ってる。だから謝…」
「黙れ」
「え、ちょっと教官さん?謝るのもダメな…」
「黙れと言っているのが聞こえないのか?」
「コミュニケーション拒否!?ていうかさっきから、何でこんな凄く一方的に俺が酷い目に!?」
そんなライルの絶叫が、プトレマイオスⅡに中を響き渡った。
(それは貴方がやっちゃったからです byプトレマイオスクルー一同)
ティエリアは、とにかくライルが気に入らない状態なので…何でも理由があったら殺ります。多分。いや…殺りはしないかもですが、半殺しくらいは…ね?
アレルヤはアレルヤだから、こんなに怒ってるというか、何と言うか…です。けれど、アレルヤだし、の一言で説明はついてしまいそうな予感。
スメラギさんがいるのはトレミーのお母さんだから。