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昔から、分からなかった。
何でどうして、自分たちは他とは『別』なのか。
あの『施設』にいたときもそう。
今の『居場所』にいるときもそう。
自分たちは、どうしても完全になじめない。
流れる血が違うのだろうか。
考える心が違うのだろうか。
違う所なんて多すぎて、いつしか、考えるのも止めた。
違っても構わないとさえ思っていた。
なじめなくても良いとさえ。
結局の所、一人じゃなかったから。
同一の存在がいつも傍にいたから。
彼とさえ一緒なら何でも良かった。
だから。
たった一人を守れれば、それで良かった。
なのに守る物が増えたのは、一人でも欠ければ『居場所』が崩れるから。
泣かれるのは……正直、本意ではない。
片割れはいつも、笑っていればいい。
そのためなら何でもする。
知っていることをワザと隠したり。
本当は思い出せる記憶を意図的に忘れたり。
何だって。
この思考もまた、一秒後には跡形もなく消えている物だ。
何故なら、自分は『忘れている過去』を忘れ続けなければならない。
そのためには、その過去に繋がる思考も忘れる必要がある。
この記憶だけはダメだ。
全てを乗り越えて前を見て欲しいが、この記憶だけは思い出させてはならない。
これはあまりに酷すぎる。
これはあまりに辛すぎる。
これではあまりに、片割れが救われない。
あぁ、だが。
だが、近々この記憶が、過去がやってくる。
それを感じる事が出来るのは、自分の能力故なのだろうか。
ならば。
ならば守るために、護るために。
記憶を呼び戻す必要があるかも知れない。
赤と紅と、罪と罪の。
単なる失敗の記憶を。
では、忘れ続けるのはもう止めよう。
全てを一切思い出して、白日に曝さず、闇夜で大事に抱えていよう。
他の誰にも見られないように。
片割れの『居場所』に対する思いが固まった、あの過去を。
さぁ『ハジマリ』を思い出そう。