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迷い込んだのは、地下室だった。
言われたとおりの場所に向かって、ハロとHAROを見つけたのは良い。
けれど問題は、その後に戻ろうとして迷子になったことだろう。
まさかこれほどまでに屋敷が広いとは……と、エクシアは地下室の天井を眺めながら思った。キュリオスと一緒に多少の冒険はしたものの、それは本当に『多少』だったらしい。
「あうあう……エクシア、ヴァーチェ…どうしよう……」
「どうしようもないな。適当に歩くしかない。上に戻るぞ」
「いや……待て」
エクシアは泣きかけているキュリオスの腕を引いて、地下室に繋がっていた階段を上ろうとした。こんな場所にいつまでにいる道理はない。
だが、それはの行動はヴァーチェの呼びかけによって妨害されることになった。
何だ。と彼の方を見る。
「ここは物置らしい。探せば家の見取り図くらい、無いこともないだろう」
「あ、そっか。地図があったら迷子にはならないよね」
「そういうことだな」
成る程、確かに発見が出来れば楽になるだろう。
けれども、一体に広がるこの段ボールの山。見つけ出すのは至難の業だ。ヴァーチェの持つ『ナドレ・システム』も、地図なんてものを探すのには役立ちそうにない。
ということは、とエクシアは状況を整理した。
つまり。
一、 このまま上に上がるか。
二、 地図を探すか。
……この、どちらかを選ばなければならない状況だった。
さて、どちらを取るべきかと三人で考え、結果。
「……探すか」
「うん。何が出てくるかな?」
「出てくるものは地図だけで良い…」
探すことにした。
とりあえず、もう一度彷徨うのは遠慮したかった。
「ではエクシアはあの辺りを。キュリオスはこの辺りを頼む。俺はあちらへ行く」
「分かった」
「僕も分かったよ。でも……」
「どうかしたのか?」
不安そうなキュリオスに、エクシアとヴァーチェは顔を見合わせて首を傾げた。どこかに彼を不安がらせる要素はあっただろうか?
二人の戸惑いをよそに、彼はモゴモゴと口を動かした。
「えっとね…そのね、何だか変なんだ」
「変、とは?」
「……良く分からないけど、色々なことが変になってる気がする」
どうやら彼にも、不安の原因は分からないらしい。
その後、彼はしばらく口を閉ざした。理由を掴もうとしているらしく、ならば自分たちが邪魔をしてはならないと、互いが互いで振り分けた箇所で、この屋敷の見取り図を探していることにした。見つかれば上々、である。
「……あ」
そばらく経ったとき、キュリオスは思いついた…という様子で声を上げた。
手を休めて彼を見れば、彼は部屋の中心にあった布の駆けられている鏡に触れた。
そして目を閉じて、呟く。
「時間と、心が変になっている…?」