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紫お題が連続で続きますが……まだまだ続く予定です。
紫のお題13~いくつかまではシリーズのようになるかと思います。薄暗い感じの話です。明るさは欠片もありません。ドロドロしてるのとは違うと思うのですが、とにかく暗い話です。
ちなみにテーマは「壊れた愛」というか、何と言うかです。

そういうのが苦手な人は読まない方が良いと思います。
あとちなみに、色お題なので一期設定です。
が、一期とかそういう話でなく現代?パロなのであまり変わらないかな…。



13.痛いんです



 僕の家は五人家族だったけれど、事故で両親が死んでからは兄弟三人で暮らしていた。
 子供だけで暮らすことは大変で、苦労も並大抵ではなかった。本当に家計が危うくなったときはこの家も手放そうかという話まで出たが、そこはどうにか堪えて家はそのまま僕たちの住居となっている。
 恐らく貧乏だと称されたであろう僕たちの生活。
 それでも、そこそこ幸せだった僕たちの暮らし。
 それに満足できなくなったのは、一体何時だっただろうか?……いや、疑問にするまでもなく答えは分かっている。この心の中に、答えはとても昔から存在していた。
 最初から。そう、最初からだった。
 僕は、最初からこの生活を愛おしく思いながら、疎ましく思っていた。
 たった一人の兄弟のせいで。
 別に僕が彼を嫌っているのではない。憎んでいるのでもない。蔑んでいたわけでもない。嘲っていたわけでも、見下していたわけでもない。
 大好きだった。
 僕は、あの人をとても好いていた。あの人には僕だけを見ていて欲しかった。他の物なんて目に入らなくなるくらい、僕と同じくらいに僕を好いて欲しかった。僕のことだけを見て、僕の名前だけを呼んで、僕のことだけを思って欲しかった。
 それに気付いたからこそ、もう一人の兄弟が邪魔になった。
 僕は考えた。どうやったら彼を除外できるか。除外して取り除いて、どうやったら僕たち『三人の』世界から消すことが出来るか。どうやったら『二人の』世界に出来るか。
 そうして案を思いついて、僕はソレを実行した。
 夜、人々が寝静まってしまう頃を待って、僕は、包丁を持って彼の部屋まで向かった。両親のいない家は三人で住むには広すぎて、一人一部屋を持つことが出来るほどだったので、実行は本当に簡単だった。
 突然の訪問に虚を突かれている彼の胸に包丁を一刺し。
 たった、それだけ。
 彼は目を見開いて、その目は驚愕に揺れていて、僕は少し満足した。
 けれども、彼の表情がニッという笑みになったのを、僕は訝しく思いながら見た。
 何でどうして。どうしてこの状況で笑っていられる。死ぬのに。もう少しで死んでしまうと言うのに。しかも、この僕の手によって、あの人を残して殺されてしまうと言うのに。どうして笑う。違う。この場で見せて良い表情は笑みなんかじゃなくて、もっと、もっとドロドロとした、
 混乱している僕を見てだろうか、あの時、彼の笑みが微かに変化した。
 そして、その笑みのままに彼は途切れ途切れに言ったのだった。

 ……ついに、か。つい……に…行動に移しやがった……な?いいぜぇ……大人しく…退場…して、やるよ……けどなぁ……後悔…すん……な、よ……?おれ…を、ぶっ刺したことを…なぁ……。そして……忘れんな…

 絶対に、思うとおりにはならねぇ

 最後の言葉だけはいやにハッキリと残し、そして金の瞳は目蓋の裏に隠れた。
 しばらく何をするでもなく動かなくなった体を見つめていたけれど、気持ち悪くなってそれは道路の方へポイと捨てておいた。その頃には早朝になっていて、それでも誰の姿も道路にはなかった。
 ふと、今でもどうして気持ち悪いなんて思ったのだろうと、考えることがある。罪悪感も何もないというのに、気持ち悪いと感じるのは妙だ。が、とりあえず結論は出ている。彼のあの表情が気に入らなかったのだろう……あの、優しげな表情が。
 死ぬなら、もっと憎々しげに睨みつけておけば良かったのに。
 後に、道路で拾われた彼は病院に送られて一命を取り留めたらしいと聞いた。現在は植物人間状態だそうで、本当にあの時、どうして右でなく左の胸を刺さなかったのだろうと悔やまれる。そうすれば、彼も無事にあの世に逝っていただろう。
 ……いや、そんなことはどうでもいい。今はとても大好きなあの人のことだけ考えよう。
 学校から帰った僕は、玄関で靴を脱いであの人の待つ部屋へと向かう。一直線に……とは言えず、その前にテーブルに買い物してきた品を置いていかなければならないけども。
 ともかく、出来るだけ早くあの人の部屋に辿り着いた僕は、ベッドの上で本を読んでいたあの人にギュッと抱きつく。
 ただいま、と言えばお帰り、と優しい声。
 授業参観に行けなかったという謝罪を、僕は首を振って答えた。そんなことは気にしない。学校に行けば否が応でもこの人の世界に他人が映り込むし、何より、この人に歩くことは無理で…来ることがそもそも出来ないのだ。彼の足の腱を切って、今も定期的に切り続けている自分が言うのだから間違いない。本当は足首から切り落とそうかとも思ったのだけど、そうすると出血多量で死にかねないから止めた。この人には死んで欲しくない。
 僕はこの人が大好きだ。本当に大好きで、手に入れた『二人の』世界を壊されないようにと手回しできるくらいに大好きで、壊そうとするモノを壊すくらいに大好きだ。
 ふいに、穏やかに僕の頭を撫でる手と対照的に、悲しげに細められる銀の瞳。
 それを見て、微かに胸にピリッとした感覚が走ったのを感じて眉をひそめる。
 けれど、それの正体が何かも分からないままに、僕はそれに関する思考を放棄した。




ここまで読んでくださった方には『僕』が誰かが分かりましたでしょうか。最初にテが付く人です。
何を考えたか、こんな暗い話……をね。ちょっと、書いてみようかと。
本当は刺された人は死んだことにしようかとか、両親も刺してもらおうかとか、廊下に地が点々と……とか思ってたんですけど、さすがにそれはどう?と思って止めました。流れの上で入らなくなったとも言いますが。
さて、このシリーズはもう少し続く予定です。
もしもよければ、どうぞ最後までおつきあい下さいませ。
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