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ミレイナを玄関へと送って、ソーマは人形たちを探す散策を開始していた。
彼女が言ってくれた場所に彼らが留まっていることもあるだろうが、それは先ほど確認したので無いのだと断定できる。いると思っていたのに、誰もいなかった時の拍子抜けした感じを、まさか感じることになるとは考えていなかっただけに驚いた。
では、と食堂へ足を向けたが誰もいなかった。玄関にも行ったし、他にも色々な場所へと行った。もう、探していない場所の方が少ないくらいには、探し回った自覚はある。
あと探していない場所は、敢えて避けていたのだけど……例えば、屋敷の住人の個室。
正直、あまり乗り気ではない。招き入れられるならまだしも、勝手にはいるというのはプライバシーの侵害も甚だしいだろう。ハレルヤの部屋なんてどうだっていいが、アレルヤの部屋に入るのは気が引けるというか。ティエリアは事情を説明すれば良いと思うので問題はない。
というわけで、入っても最も罪悪感を感じないだろうハレルヤの部屋に足を向けてみたのだけど……姿はなく。
溜息を吐いて、ソーマはくるりと踵を返した。
次はティエリアの部屋に行こう。最後にアレルヤの部屋が良い。できればアレルヤの部屋には立ち入りたくないのだ……許可を取っていないから。取っていたら入るのだけど。
そうして向かったティエリアの部屋。微かに開いているドアを見て、当たりだったかとソーマは軽く息を吐いた。もう歩き回る必要もないようだ。
「エクシア、キュリオス、ヴァーチェ……いますか?」
「ソー…………と待…………」
「エクシ……にやって…」
「……い………上が…」
ヒョコリと部屋の中を覗き込みながら尋ねれば、ティエリアの部屋にある下り階段の奥から、その声たちは反響しながら微かに聞こえてきた。ちなみに、ハロとHAROは階段入り口の当たりにいた。
どうしたのだろうと、ソーマは階段入り口に立つ。
この奥には倉庫があり、大切な物も色々としまっているハズで……というか、何でどうして彼らはこんな場所に入っているのだろうか。迷子だったら呆れるが、何だか少し微笑ましくも思う。
しばらくして上がってきた三人に、視線でどうしたのかと問いかければ、キュリオスが困ったように笑った。
「えっとその……迷子になって……見取り図探したいなぁって…」
「そうですか……ですが、この家の見取り図はありませんよ?」
「……そうなのか」
「えぇ。いらない、と捨てたそうです」
そう言って、いや……と心の中で言葉を改める。
捨てたのではなくて、ティエリアとハレルヤがケンカ中に、破って燃やして灰にしてしまったのだった。お陰で当時は見取り図に頼っていたソーマは、高確率で迷子に陥ることになった。付け加えると、この恨みは主にハレルヤに向いている。
まぁ、そんなことを人形たちに話してどうという事もないだろう。
肩を竦め、とととっと近寄ってきたキュリオスの手を取る。
「そろそろ戻りましょう。ハロとHAROはここにいますし、もうすぐ夜です」
「あ……デュナメスたちが心配するね」
「いや……まだ伸びている気がするんだが」
ボソリと呟かれたヴァーチェの言葉に納得しつつ、ソーマはいつも通りに裂け目を作り出した。もう、この力を使うことにもかなり慣れている。
「では入ってください」
「分かった」
頷いたエクシア、キュリオス、ヴァーチェ、ハロとHAROの順番で入っていったのを確認して、ソーマは最後に裂け目の中に入った。