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「ケルディム、ねぇ、ケルディムってば起きてよ」
「う……」
「ようやく起きるか……」
「あと二十四時間……」
「殺る」
「え、ちょい待てヴァーチェ!それでも一応俺の対応型!」
殺気を立ち上らせたヴァーチェを必死になだめようとするデュナメスを見つつ、ソーマは呆れながらも仲裁に入ろうとは思えなかった。この状況で入ろうとするのは恐らく……自殺行為以外の何者でもない。絶対に。
……アレルヤが『いなくなって』から数時間が経ったのだという。が、依然として彼の帰ってくる気配はなく、足取りを掴むことも出来そうにないのが現状だ。つまり、八方ふさがりであると言うことで、それはソーマにとって、ライルにとって、何よりもハレルヤにとってはとても辛い事だった。今起きている人形たちにしたってそうだろう。
そんな時に一つの案を出したのはエクシアだった。
彼はこう言ったのだ……「ケルディムを使えばいいだろう」、と。
それがどういうことかソーマには分からなかったのだが、それだけで人形たちの間ではどういう事かが分かったらしい。全員が成る程、という顔をしていた。
彼ら曰く、ケルディムは人形たちの中で最も気配を読むことに長けているのだそうだ。ヴァーチェも似たようなことは出来るらしいが、それとはまた一つ違ったような状況把握能力なのだそうだ。違うところは、ヴァーチェの場合は障害物の有り様も確認することが出来、ケルディムの場合は気配しか読み取れない物の正確で範囲も広い所らしい。
イマイチぴんとこなかったが、二人のそういった能力の用途は少しばかり違って、使用するに相応しい状況が違うと言うことでいいのだろう、多分。
ともかく、そういうことを知ったからには彼の能力を使わない手はない。そう考えたソーマたちは早速、力を借りるべく彼を起こそうと思ったのだが……何でか全く起きてくれない。彼らは、こういうことは普通にしょっちゅうあるから、と言っていたので……日常風景なのだと思うが。
にしても本当に、何で起きないのだろう。殴る蹴るは当たり前の世界に入ってしまったというのに。ちなみに、殴っているのは主にヴァーチェ。起きようとしない彼が本気で苛ついてきたとか何とか。
「エクシア、君の持つ剣で彼を切ってくれないか?そうすれば流石に起きるだろう」
「いや、それはマズイと思うが」
「…そうだよヴァーチェ。やっぱり、ちゃんと起こしてあげないと……」
「キュリオスは優しいよなぁ…なぁデュナメス、お前もちゃんと見習えよ」
「あー、何時の間に起きたとかそういうことは置いて置いてだけどな……言っておくが俺が厳しいのは基本的にお前に対してだけだからな、ケルディム」
いつの間にか起き上がって自然に会話に加わっていたケルディムは、その言葉にあーだのうーだのうなり声を上げて、そして。
「……オヤスミッ!」
「寝るなこのバカッ!」
「えー!?だったお前、俺が起きてたら絶対に説教くらわせるんだろ!?」
「当たり前だろ……?お前、どれだけやらかしてきたと思ってるんだよ……」
「んっと…色々?てか、何か俺に頼みでもあるんだろ?」
その言葉にハッとする。そうだった。人形たち……というかケルディムとデュナメスの会話に言葉を挟むことが出来なくて黙っていたけど、彼に頼まなければならないことがあるのだった。勢いで思わず忘れかけてたけど。
「テメェの力を貸せ」
「んー……別に良いけど、何しろって?」
「探し者を手伝ってくれれば良いんです」
自分たちでは難しい探し者を。
そう言うと、彼は少しも悩まずに頷いた。