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「悪い……俺には無理だぜ」
「……ってことはつまり」
「手がかりはないな」
冷静に呟くヴァーチェを一睨みして、ハレルヤはガンッと壁を殴りつけた。
その音にビクリとキュリオスは震え、エクシアが咎めるような視線を送ってきたが気にはしない。そんなことに構っている場合ではないのだ。
アレルヤ。あの、自分の片割れが本当に行き先も分からず。
ここにいない。
ある程度なら働いた勘も今ではシンと大人しいままで、頼みの綱だったといえるケルディムの気配を読む技能も無駄だった。
まさに、万事休すとはこのことを言うのだろう。
「ハレルヤ……イライラすんのは分かるけど」
「……分かってる。ンなコトしても何も変わらない……だろ?」
そのくらいは理解している。小さな子供でもあるまいし……分かってはいるのだ。
けれども、どんな方法を使ってもアレルヤの居場所に、掠りさえしないことは……確かに、この身を苛立たせている。
もちろん……とは言えないだろうがそれだけではなくて、いつも感じていた二人だけの『繋がり』も途絶えていることも原因だろう。片割れの居場所ならば勘である程度は把握できることも『繋がり』の一環ではあるが、それ以外にも自分たちの間だけで行うことの出来る思考による会話。あれも、先ほどから試しているが効果はない。
完全に『繋がり』が途絶えているような感覚。
あるいは、何かに邪魔されているような不快感。
そのどちらとも言えない不愉快さを、ハレルヤは感じ続けていた。前者はともかくとして、後者の方は『誰が』邪魔をしているのかが分からないのだが。それでも誰かが邪魔をしているのだろうと、そういうことは分かった。
ただ、そうなると『誰が』……というよりも『何が』邪魔しているのか、という方が問題となる。自分たち双子の持つ不完全ではあるが魔族の王の力は、ある程度の他者の力は受け付けずにいることも可能としているのだ。例えば、相手が異端だった場合、その力が発動する前に消し去る……といった。
ティエリアあたりにでもその力を封じさせてしまうことも出来るだろう。王の物であったとしても、所詮は魔族の力だ。彼の能力によってならば封じることも出来る。その場合は、どうやって彼を味方とするのかが鍵となる。何せ、彼はこちら側の人間なのだから。
「んー……な、お前らなんか役立ちそうなモンとか無い?」
「どうしてお前はそんな唐突に……」
「デュナメス、お前には訊いてないから。コイツら屋敷?だっけに帰ってたんだろ?なら、そのついでに何かあるかなぁ……とか思った」
どう?と問いかけるケルディムにエクシアたちが腕を組んで考え込むこと数秒。
そういえば、とヴァーチェがキュリオスを見た。
「キュリオス、あの良く分からないヤツはどうなんだ?」
「えっと……?」
「鏡の形をした、時と心の変調の原因の一端だ」
鏡?
彼が何気なしに零した言葉に、ハレルヤは眉根を寄せた。
あの屋敷にある、何かの原因になるような鏡と言えば。
それはただ一つ。
「ヴェーダ……?」
瞬間、辺りを光が満たした。