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歌と言えばあの人です。が、そういえば今回出てませんよね……。
というわけで、あの人視点?で十六話です。
16.応援歌
「暇、ねぇ……」
ガンダムに乗った刹那がカタロン基地から出て行って、マリナは一人、洗濯物をたたんででいた。やってきた彼に駆け寄ったときについつい投げ捨ててしまったアレである。ポッとしてしまったのは良くないだろうが良いとしても、その後にワヤワヤと人が集まったせいで洗いたてだったそれらは汚れてしまって……仕方なく二度目の洗濯を行ったのだ。
もちろん、洗濯物に汚れを付けた対象には一人一人に注意しておいた。説教をくらったメンバー全員が、終わった後に何となく精気が抜けていたような様子……だったのは不思議なのだが理由は分からなかった。
部屋から出て行った子供たちはまだ戻ってきていない。いつのまにかいなくなっていた彼らはきっと、自分たちに気をきかせてくれたのだろうとは思うのだが……あまり気を利かされても変わらないというか。話したのは大体が大変なことだったし。
それよりも。
「たたみ終えたら……どうしようかしら。シーリンはお出かけ中だし、子供たちは見あたらないし、お手伝いっていっても出来ることは少ないし……」
本当、何をしていたらいいのだろうか。
頬に手を当てて考え込んでいたマリナは、そうだ、とポンと手を打った。
「作戦の話し合いをしているあそこに行こうかしら」
確か、これから連邦の正規軍のクーデターがあるとかいう話だったはずだ。事情などを知っている身としては、これは見ていた方が良いのではないかと思う。彼らの行動によって連邦がどう動くかが気になる。それが直接にアザディスタンについて繋がるとは、残念ながら全く思えないのだけれど。
だから、多分、その部屋に行けばテレビかスクリーンか……あると思うのだ。カタロンというのは反連邦組織だから、こういった事柄を見逃すことはないだろうし、行けば間違いなく連邦からのコメントを見ることが出来るだろう。
そうと決まれば話は早い。マリナは立ち上がって部屋を出て、その作戦本部…っぽい(正式名称は知らないので…)部屋へと向かった。途中すれ違った子供には部屋にいるようにと告げておいて。公式発表を見たら部屋に戻って一緒に遊んであげよう。お菓子……はあっただろうか。帰り道に厨房にでも寄って、何かあるかと探してみるのも良いだろう。
などと思っている間に部屋について、マリナは奇跡的に空いていた椅子に腰掛けた。部屋はほとんど満員で、取り付けただけのスクリーンがそこに立てかけてあった。映っているのはいつもの連邦の決定を伝える女性。ふと思うのだが、彼女以外にこういう話をする役の誰かはいないのだろうか。
それはともかく、集まっていた人々の様子からして何かの発表があったのだろうと見当付け、近くにいたカタロン構成員の一人……池田という元ジャーナリストに、マリナは軽く声を掛けた。
「すみません、連邦は何か言っていましたか?」
「ん?あぁ、マリナ皇女。見に来たんですか?」
「えぇ。それで?」
「要求の内容は端折りますが、連邦はあくまで要求は呑まないと。それから……クーデターが連邦軍の仕業だと公表するつもりは無い様子で」
「そうなの…」
成る程、確かに仲間割れなんて、一般人に知られたら大変だろう。軍の中にほころびがあると伝えているような物だし。
納得しながら頷いていると、連邦から新しい発表があるとの報道が流れた。
「会談に応じるのかしら……?」
「どうでしょうね……先に『屈しない』なんて言ってましたし」
「でも、人質がいます」
流石にあれだけの人数を見殺しにはしないだろう。まぁ、反乱軍の内情をある程度知っているので、マリナは人質の安全の有無に関しては危険性は抱いていない。むしろ、アロウズの行いの方が気になるくらいで、国一つ焼き滅ぼすような……そんな連邦が、一体何をしようとするかが怖いくらいだ。反乱軍に対する恐怖は、比べるとあまりない。
その点から見れば手出しなど出来ないだろうと、思いたいのだが……。
次の瞬間、画面に映し出された光景にマリナは息を呑んだ。
「これは……」
「……間違いなく、連邦による情報操作でしょう」
占拠されている一般人。そこまでは良いとする。良くなくても。何せ立てこもり名のだから、占拠されていない方がおかしい。けれど。
占拠していた人々による銃撃が、一般人の命を奪っているなんて。
「……酷いわね」
これが池田の言うとおり、アロウズの、連邦のやり方なのか。
戦慄しながら眺め、ふと浮かんでくるのは子供たちと作った例の歌。
あの歌に込められた願いと同じような世界が出来ればいいのに。本当にそう思う。そうすれば、戦いなんて無くなるのに。
そう思うと、無性に歌が歌いたくなった。
歌に、思いを込めて歌いたくなった。
あの歌がどこまで人に届くかは分かりませんが。