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何を思ってこんなのを書いたのだろうか……。
ヨハン兄が家出を考える話です。
13.P.S.
「……家出をしようと思う」
『……………………………はい?』
通信機越しの相手の予想通りの反応を眺めつつ、ヨハンは真剣な面持ちのままに言葉を続けた。何も、これは冗談というわけではないのだ。
「その際に君たちの所に厄介になりたいのだが……ダメだろうか」
『えっと…スメラギさんに聞いたらOKもらえると思いますけど。あの人、最近イベントに飢えているようで……そういう平和な厄介事は喜んで引き受けるかもしれません。というか……どうしたんです?』
「いや……」
ふと遠い目をして、ヨハンは最近の弟妹たちの様子を思い出した。
夜は夜更かしし放題、菓子の袋はそのまま放置、その袋の中身がないかと思ってみたら実はいくらか残っていたたり。その上、部屋の片付けはやらないし、家事洗濯は全て自分が担当しているしで……完全に、二人の生活が乱れていた。いい加減に世話が焼き切れない程に。これはある意味頼られているとも言えるのだろうが、生憎、こんな頼られ方はされたくない。
それはともかく……この内容をそのまま伝えるのは流石に憚られたヨハンは、軽く視線を逸らして呟くように言った。
「……色々とあってな」
『色々じゃ分からねぇから訊いてんじゃね……ちょっとハレルヤ勝手に出てこない!……で、色々、ですか?』
「あぁ、色々だ。内容は好きに想像してくれて良い。多分大体あっている」
『そ……そうですか』
若干顔を引きつらせながらも、画面の中のアレルヤは辛うじて笑みを浮かべていた。……これは中々凄いモノだと思う。無理をしているのはありありと分かるのだが、それでもどうにか笑みを浮かべようとする彼の努力が凄い。その努力だけで何だか癒される。
『だとして……決行はいつにするんです?』
「出来れば直ぐに……と言いたいが、私にも準備があるからな……」
『じゃあ明日、ということで?』
「それが無難か」
半日もあれば準備は滞りなく終わるだろう。そんなに持っていくような物はないし、むしろこちらで様々な事をする方が大変なのだし。例えば明日の朝食の準備だとか。
「置き手紙もいるか……?」
『あー……かもしれませんね。突然になくなったら大混乱ですし』
「……探さないでください、とでも書いておくべきだろうか?」
『……さぁ?』
そんなこんなだったが何とか書くことにして、結局「しばらく旅に出ます」というあたらずも遠からず、といった風な文を書いた。これだけで状況を把握してくれることはないだろうが、手紙があるのと無いのとでは感じがとても違うだろう。
こと、とペンを置いて明日の準備をするべく立ち上が……ろうとして、しかし、何となく不安だったので手紙の続きに『追伸』と書き加えてペンを走らせる。
追伸
・ ちゃんと歯は磨くように
・ ミハエルは肉を食べ過ぎない
・ ネーナは甘いものを食べすぎない
・ 夜は早めに寝ること
・ 寝るときはちゃんと明かりを消す
・ 布団はたたむこと
・ 部屋の整理整頓を忘れずに
・ HAROの充電器は私の部屋にあるから確認しておくこと
・ 定時刻にガンダムの整備をしておくこと
・ 冷蔵庫の中の物の賞味期限はしっかりと確認
・ ガスが出ていないか元栓をちゃんと見る
・ 掃除機は少なくても二日に一度はかけること
・
「……」
と、ここでペンを走らせるのを止め、ヨハンはまじまじと追伸部分に書いた事柄を見る。
「……アレルヤ」
『何です?ヨハンさん』
「はやり…家出は止めようかと思う。何だか心配になってきた」
『……それが一番かも知れませんね』
トリニティ三兄弟は、長男がいないと生活が大変なことになりそうな予感がするのです。