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「さて……これはどうしたら良いんだろうね?」
「俺に訊くな。こちらの方が聞きたい気分だ」
「……」
賑やかな一団が見える、その一団からは壁のせいで見えないような場所。
そこにリジェネたちはいた。
妙な話である。先ほどまでは家の方でのんびりとしていたはずであり、決してこのような場所にはいなかった。気付けばここにいたのだ。
確かにこの場所……博物館には、来ようとは思っていたけれど。
それはあくまで明日のことなのだ。
「にしても何なんだ?あの騒々しい一団は」
「……さぁ?何だろうね?僕らと同じような境遇の人たちかも」
「でなければ説明がつかないだろう。あんな賑やかな強盗がいてたまるか」
強盗、その言葉を口の中で転がして苦笑する。
今は夜だし、まぁ、よっぽどのコトがなければそういった対象以外、この場所に来ることはないだろう。自分たちの場合は『よっぽどのコト』があったから、ここにいるわけで。
にしても、これでもまだ思い出さないとは。
ティエリアの様子には呆れるやら、安堵するやら何やらである。
正直に言うと、彼らを見た瞬間に全てを思い出してもおかしくないと考えていた。それ程までに彼らの絆は強いから。それはティエリアが抱き上げている子供の方にも当てはまるのだけれど、こちらは彼以上に強い束縛を受けているので心配はほとんど無い。
それでも少し気になりはしたので、ちょっとだけ訊いてみることにした。
どのくらい彼らを見て、何を思っているのかということを。
「ね、ティエリア」
「何だ?」
「彼らを見て何か思うことはある?」
「思うこと?……そうだな」
微かに悩む様子を見せて、ティエリアは騒々しい一団の中、四人ほどの姿を順々に指さした。
「あの金眼の男は見た瞬間に思い切り頭を殴りつけたくなった。蹴りつけても構わない。それから金髪の方は記憶から抹消したいというか……黒い髪の彼には懐かしい感じを抱くが理由は不明だ。彼女には……申し訳ないと、思った」
「ふぅん?」
「他は何も思わない」
一人の少女に対しての『申し訳ない』に引っかかりは覚えたが、それ程までに色々と感じて尚、特別な反応が見えないのだから何の支障もないだろうと判断する。
「それよりも……あの小さいのは何だ?」
「あぁ……あれはまぁ、アレだよ」
「アレでは分からないんだが?」
「そこはフィーリングでお願い」
説明を与えても良いとは思うし、問題はないと思うけど。あまり多くの情報を与えないことが全てのコツだ。そういうわけでリジェネは黙秘権を使うことにした。
ワケが分からない。そう呟いたティエリアに笑って見せ、ふと、彼以上にリアクションを見せない子供の方へと視線を向ける。彼は、ジッととある一人を見つめていた。
無理もないかな、と苦笑してから再び一団に目をやると。
ばっ、と一対の目が向けられた。
その碧色の瞳はまるでこちらを射抜くようで。
これ以上は隠れることも許してくれないらしい。そう考えて溜息を一つ、それから苦笑を深くした。さぁ、どうしようか。彼らのうちの何人かには、目の敵にされているのだけども。