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あんまりに衝撃的だった今回(00二期、第十七話)の話。
昔は幸せな日々を過ごせていたんだろうか…。

Cパートの、「もしもの事があったらアンドレイをお願いしますね」という趣旨のホリーさんの言葉の、その後…何時間か後、みたいな話です。



17.恐かったんだ



「……あぁいうことは、あまり言うな」
「あぁいうことって何です?」
「もしも自分に何かあったら……などと、わざわざ口に出さなくても分かっている」
 深夜、一人息子も寝静まっているような時間帯。
 ホリーとセルゲイはリビングで机を挟んで向かい合って座っていた。その、挟まれている机の上にはたくさんの書類。司令であったり、周辺地域の地図であったり、作戦に参加する軍人のリストであったりと……全て次の作戦に関するものだった。
 その中の一枚を手に取りながら、セルゲイが溜息を吐く。
「だが、あまり聞いて楽しい話でもないからな」
「それはそうでしょうけれど、言っておかないといけない気がしたんです」
「……どうしてもか?」
「えぇ。あぁ言って釘を刺しておかないと心配ですから」
 使わなくなった書類を纏めながら、ホリーは柔らかく微笑んだ。
 軍での作戦ではかなり頼りになる自分の夫だけれど、こういう家庭に関することに対しては……あまり免疫がないというか、不器用だった。良い父親であろうとしているのは分かるけれど、ちょっとばかり空回りしている感じ。
 だから言ったのだ。言ったところで不器用さが変わるわけでもなく、ちゃんと一人だけの息子を夫が任されてくれるかは不明なのだが。頑張っていても結果が出るとは限らない。軍なんて場所にいれば、それは身に染みて良く分かる。
「大丈夫ですよ。私もどうにかなる気はありませんから」
「あったら問題だぞ……」
「…確かにそうですね」
「とにかくだ、心臓に悪いからもう言うな」
 その言葉にホリーは目を丸くした。
「あらあら、ロシアの荒熊ともあろう方がそんな事を」
「悪いか?俺も人の子だ。怖いと思うことくらいある」
「私がいなくなるのが怖い?」
 何となく、続けた言葉。
 それに対してセルゲイは一瞬ほど躊躇い、それから頷いた。
 ホリーは再び目を見開いて、直ぐに優しく笑んだ。
「そう思われてるのはとても嬉しいですけれど、分かってますね?」
「……あぁ。戦況によってはお前も切り捨てる」
「よろしい」
 司令官は作戦に私情を挟むべきではない。一人を救うために十人を犠牲にするような事は行うべきではないとホリーは思う。平和のために、一人でも多くの人が死なないために自分は軍にいるというのに、自分のせいでより多くの人が死ぬのは嫌だった。だからこそ、夫の受け答えは満足できるものであり、実際、自分からは見えない自分の顔には満足げな感情が現れていることだろう。
 酷い約束をさせていることは分かる。いざとなれば連れ添ってきた妻さえも切り捨てろと言っているのだから。それに対して、この誠実で正直な男が何も思わないわけが無いのだと知りながら、約束させているのだから。
 けれど、約束に対しての後悔はこれっぽっちも、無い。
 これこそが、軍、だ。
「まぁ、貴方が頑張って私がどうにかならないような司令を与えれば良いんですけど。頼りにしていますよ?ロシアの荒熊さん」
「簡単に言ってくれる……いっそお前が指揮するか?」
「ご冗談を。私は貴方の指揮下だから安心して戦えるのですよ?」
「……そうか」
「ふふ…ちょっと照れてます?」
「……………別に」
「照れてますね?」
 ふいとそっぽを向いてしまったセルゲイが微笑ましくて、思わずクスクスと笑ってしまう。何だかやっぱり、この人と一緒にいるととても楽しい感じがする。さっきから笑ってばかりだ。こんな仕事の話でも楽しいと思えてしまうから不思議。
「そうだ。作戦が終わったらアンドレイを連れてどこかへ行きましょう」
「アンドレイを連れて?どこへだ?」
「それは後で考えるんです。ほら、作戦のせいでしばらくアンドレイに構ってあげられないでしょう?だから、たまにはと思いまして」
「……アンドレイはどういう場所が好きなのか…」
「あとで一緒に考えますか」
 確認を終えた書類を片付けながら、ホリーは作戦が終わった後について考える。
 それはきっと、訪れればとても素晴らしく、優しく、暖かい時間。家族だけで凄く、家族だからこその平和な時。
 セルゲイは先ほど、ホリーがいなくなるのが嫌だと言ってくれた。
 けれど、それはこちらも同じなのだ。
 ホリーだってセルゲイが、アンドレイがいなくなるのは嫌だ。恐い。想像するだけで世界が凍り付きそうな気さえする。とても、大切な二人だから。
 しかし、だからこそ、自分は切り捨てられてでも彼らを守れたら良いと思うのだ。






ホリーさんって、とっても優しいお母さんだったんだろうな…。
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