式ワタリによる、好きな物を愛でるブログサイト。完全復活目指して頑張ります。
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拍手再録です
ただ……『マイスターズ』?
微妙に違うような、でも会ってるような組もいるけど……。
「ねぇ、ハレルヤ。何か歌ってくれないかい?」
いきなり口を開いたかと思ったら、いったい何を言い出すのだろう。
ここは食堂。今ここにいるのは二人だけ。アレルヤと、少し離れたところで眠っているティエリアだけだ。
正確に言うと少し違うのだが、物理的にはそうなのでそういうことにしておく。
『どーしてだよ』
「なんとなく。それにハレルヤって歌、上手じゃないか」
『……理由、それだけか?』
「うん。これだけだよ」
頷くアレルヤを、ハレルヤは呆れて見た。
どうしてこう、いつもいつも唐突なのだろうか。
ため息をついて、それから一言。
『何、歌って欲しい』
「優しい感じの歌」
なんで自分と180度逆なものをリクエストする。
文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、彼の笑顔を見て、止めた。
アレルヤはとても楽しそうに微笑んでいて、それに毒気を抜かれてしまったのだ。
結局ハレルヤはもう一度ため息をつき、彼の知っている曲の中でもっとも優しげなものを歌い始めた。
最初はそれを幸せそうに聞いていたアレルヤだったが、少し経ってから歌に加わってきた。
二人だけの合唱。他の誰も知り得ない、小さなコンサート。
ハレルヤとアレルヤは歌いながらも顔を見合わし、笑い合った。
トレーニングルームに行こうと部屋を出ると、何か耳に届く物があった。
何だろう、と耳をそばだてるとそれは、歌であるのだと分かる。
優しく、暖かな歌声。
多分、歌っているのは彼だろう。というか、こういう歌い方をするクルーを他には知らない。知らないだけで皆、実はしているのかもしれないが、少なくとも刹那が知っているのは彼だけだ。
立ったまま聞いていたが、しばらくしてから移動を開始する。
「あら、刹那」
「……スメラギ・李・ノリエガ」
途中、この船の戦況予報士にあった。
彼女もこの歌を聴いていたらしい。何をするでもなく壁により掛かっていた。
「どこかに行くの?」
「答える必要はない」
言うと、彼女は苦笑した。
「まぁ、訊かなくても分かるけど」
なら訊くな、と言いたかったが止めた。口では彼女に勝てない。
「一応言っておくけど、トレーニングルームはそっちじゃないわよ?」
「知っている」
今刹那が向かっているのは、そこではない。
歌声の、聞こえる方だった。
「そう。なら、この歌の主に上手だったって伝えといてくれる?」
「分かった」
刹那はまた、移動を開始した。
「……ん?誰か歌ってんのか?」
通路を移動している途中、いきなり聞こえてきた歌に足を止める。
キレイな歌、だった。
「ジョウズ、ジョウズ!」
「だよなぁ……どっから聞こえて来てんだ?」
この声は彼のものだ。
声の聞こえてくる方向には確か。
「食堂か?」
「ショクドウ、ショクドウ!ゴハン、ゴハン!」
「いや、そんな時間じゃないだろ……」
跳ねるハロに、苦笑して答える。
時刻はまだせいぜい三時くらいで、昼食には遅すぎるし夕食には早すぎる。
今日はミッションがない。だから暇で、だからといって部屋にずっといるのも退屈で。彼が食堂にいるのはそういう理由からだろうと思う。
「どうすっかな……」
ぽりぽりと頭を掻く。
報告書の提出は先ほど終わり、今はもうやることはない。
さっきまでは、このまま部屋に戻ろうと思っていたのだが。
「ロックオン、イク、イク?」
「んー……じゃ、行くかぁ!」
相棒を抱えて、ロックオンは食堂に向かった。
心地よい歌声に起こされ、ティエリアは目を開いた。
うつぶせになっていた顔を軽く上げると、そこにあったのは見慣れた背中。
どうやら、歌っているのは彼ららしい。
決して大きな声なわけではないのだが、とてもよく響く。この分だと、結構遠くまで伝わっているのではないだろうか。
目をこすりながら体を起こしても、彼は気づかない。歌うことに集中しているようだ。
頬杖をついて、その歌を聴く。
声をかけてもいいが、そうするとこの歌を中断させることになる。それはもったいない気がした。
あまりに穏やかな歌なのでまた眠ってしまいそうだったが、そこは耐えることにする。せっかく彼の歌を聴くことができるのだから、このくらいは我慢しなければ。
それにしても歌い慣れている。あまり聴かないが、もしかしたらしょっちゅう歌っているのかもしれない。聴くことが少ないのは、彼の片割れがジャマをするからか、自分が気づいていないだけか。前者だとは思うが。
では今はどうして聴けるのか、と訊かれると分からない、と答えるほかない。歌うことに夢中になっているだとか、ティエリアが起きていることに気づいていないだとか、食堂のドアが少し開いているのに気づいていないだとか、推測はいくらでもできるが。
まぁ、理由はどうであろうとかまわない。彼の歌が聴ける。それだけで十分だ。
ティエリアにしては柔らかい表情を浮かべ、目を閉じる。
そろそろジャマが入ってくるだろうが、それまでは特等席でこの歌を聴いておこう。
「ん?なんだぁ?」
暇で暇でしょうがなかったので船を操縦していた兄をからかいに来たミハエルは、そこで普段聞き慣れないものを聞いた。
歌、である。
末っ子のネーナはたまに聞いているのを見るが、長男のヨハンが聞いている場面は見たことがない。それから、あまり興味がない自分も聞かないし。だから、あまり歌を聞いたという記憶はない。
「あぁ、ミハエルか」
不思議がっているみえはるに気づいたのか、ヨハンが視線を彼に向けた。
「兄貴、何聴いてんの?」
「歌だ」
「いや、そりゃ聞けば分かるけど」
ミハエルが聞きたいのはそういうことではない。
どうして歌を聴いてるのかという、それの理由を遠回しに訊いたのだが。
どう言ったらいいか、と悩むミハエルを見て、ヨハンが笑った。
「これはプトレマイオスからの音声だ」
「へぇ……って、え?」
「先日あちらに行ったとき、うっかり電源の入った通信機を落としてしまってな」
「それって盗聴じゃ」
「偶然なのだからしかたないだろう」
しれっと言う兄を呆れて見、それからしっかりと音声に耳を傾ける。
「……あ、この声って」
「分かったか?」
しばらく聞いていて、それが誰の声か分かった。
思わず船の目的地を確認すると、そこはプトレマイオス。
「…どうせなら、生で聞きたいって?」
「いいや?通信機を取りに行くだけだが?」
ヨハンの顔を見れば、それが冗談であることは容易に分かった。
が、それについては何も言わず、ミハエルは笑って肩をすくめた。
何か言ってヨハンの気が変わってしまうのはゴメンだ。自分だって彼の歌を直に聴きたいのだから。
ただ……着いたときに歌が終わっていたら、という不安はあったが。
「おー、やっぱりアレルヤかー」
「ウタッテタ、ウタッテタ!」
食堂のドアが開き、ひょこりとロックオンが顔を出した。足下にはハロ。
彼が入ってくると次は刹那が来た。
「あ、ロックオンにハロ……それに刹那も。どうしたの?」
首をかしげると、ロックオンは笑った。
「いやぁ?歌が聞こえたから。なぁ、刹那」
「あぁ」
答えながら、二人はアレルヤの前に座った。
と同時に、後ろからガタリと音がしてそれから、眠っていたはずのティエリアがアレルヤの横に来た。
「意外と早かったな」
それから、当たり前のようにアレルヤの隣に座る。
その一瞬、目の前の二人が殺気だったような気がしたのは気のせいだろうか……すぐにそんな感じは消えてしまったので、多分気のせいだろう。
「ティエリア、起こしちゃった?ゴメンね」
「気にするな。いいものを聴けた」
「……そう?」
面と向かってほめられると、とても嬉しい。
『ちっ……聴かれてたのか』
「……?どうかしたの、ハレルヤ?」
『なんでもねーよ』
ぼそり、と半身が何か言った気がしたが、上手く聞き取れなかった。
だから訊いたのに、彼はふいっと横を向いて答えてくれない。
どうやったら教えてくれるだろうか。
「アレルヤ」
が、その思考は刹那の言葉に遮られた。
彼の顔を見る。少し、深刻そうな表情だ。
何だろう、と不安になる。
「また、歌ってくれるか?」
が、彼の口からこぼれ出たのはこんな言葉。
アレルヤは微笑んだ。
「いいよ、また、機会があったらね」
「では、さっそく歌ってもらおう。さっきと同じ曲でいい」
「分かったよ、ティエリア」
笑みを深くして、それからアレルヤは息を吸った。
果たして、トリニティは間に合ったんだろうか……。
いきなり口を開いたかと思ったら、いったい何を言い出すのだろう。
ここは食堂。今ここにいるのは二人だけ。アレルヤと、少し離れたところで眠っているティエリアだけだ。
正確に言うと少し違うのだが、物理的にはそうなのでそういうことにしておく。
『どーしてだよ』
「なんとなく。それにハレルヤって歌、上手じゃないか」
『……理由、それだけか?』
「うん。これだけだよ」
頷くアレルヤを、ハレルヤは呆れて見た。
どうしてこう、いつもいつも唐突なのだろうか。
ため息をついて、それから一言。
『何、歌って欲しい』
「優しい感じの歌」
なんで自分と180度逆なものをリクエストする。
文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、彼の笑顔を見て、止めた。
アレルヤはとても楽しそうに微笑んでいて、それに毒気を抜かれてしまったのだ。
結局ハレルヤはもう一度ため息をつき、彼の知っている曲の中でもっとも優しげなものを歌い始めた。
最初はそれを幸せそうに聞いていたアレルヤだったが、少し経ってから歌に加わってきた。
二人だけの合唱。他の誰も知り得ない、小さなコンサート。
ハレルヤとアレルヤは歌いながらも顔を見合わし、笑い合った。
トレーニングルームに行こうと部屋を出ると、何か耳に届く物があった。
何だろう、と耳をそばだてるとそれは、歌であるのだと分かる。
優しく、暖かな歌声。
多分、歌っているのは彼だろう。というか、こういう歌い方をするクルーを他には知らない。知らないだけで皆、実はしているのかもしれないが、少なくとも刹那が知っているのは彼だけだ。
立ったまま聞いていたが、しばらくしてから移動を開始する。
「あら、刹那」
「……スメラギ・李・ノリエガ」
途中、この船の戦況予報士にあった。
彼女もこの歌を聴いていたらしい。何をするでもなく壁により掛かっていた。
「どこかに行くの?」
「答える必要はない」
言うと、彼女は苦笑した。
「まぁ、訊かなくても分かるけど」
なら訊くな、と言いたかったが止めた。口では彼女に勝てない。
「一応言っておくけど、トレーニングルームはそっちじゃないわよ?」
「知っている」
今刹那が向かっているのは、そこではない。
歌声の、聞こえる方だった。
「そう。なら、この歌の主に上手だったって伝えといてくれる?」
「分かった」
刹那はまた、移動を開始した。
「……ん?誰か歌ってんのか?」
通路を移動している途中、いきなり聞こえてきた歌に足を止める。
キレイな歌、だった。
「ジョウズ、ジョウズ!」
「だよなぁ……どっから聞こえて来てんだ?」
この声は彼のものだ。
声の聞こえてくる方向には確か。
「食堂か?」
「ショクドウ、ショクドウ!ゴハン、ゴハン!」
「いや、そんな時間じゃないだろ……」
跳ねるハロに、苦笑して答える。
時刻はまだせいぜい三時くらいで、昼食には遅すぎるし夕食には早すぎる。
今日はミッションがない。だから暇で、だからといって部屋にずっといるのも退屈で。彼が食堂にいるのはそういう理由からだろうと思う。
「どうすっかな……」
ぽりぽりと頭を掻く。
報告書の提出は先ほど終わり、今はもうやることはない。
さっきまでは、このまま部屋に戻ろうと思っていたのだが。
「ロックオン、イク、イク?」
「んー……じゃ、行くかぁ!」
相棒を抱えて、ロックオンは食堂に向かった。
心地よい歌声に起こされ、ティエリアは目を開いた。
うつぶせになっていた顔を軽く上げると、そこにあったのは見慣れた背中。
どうやら、歌っているのは彼ららしい。
決して大きな声なわけではないのだが、とてもよく響く。この分だと、結構遠くまで伝わっているのではないだろうか。
目をこすりながら体を起こしても、彼は気づかない。歌うことに集中しているようだ。
頬杖をついて、その歌を聴く。
声をかけてもいいが、そうするとこの歌を中断させることになる。それはもったいない気がした。
あまりに穏やかな歌なのでまた眠ってしまいそうだったが、そこは耐えることにする。せっかく彼の歌を聴くことができるのだから、このくらいは我慢しなければ。
それにしても歌い慣れている。あまり聴かないが、もしかしたらしょっちゅう歌っているのかもしれない。聴くことが少ないのは、彼の片割れがジャマをするからか、自分が気づいていないだけか。前者だとは思うが。
では今はどうして聴けるのか、と訊かれると分からない、と答えるほかない。歌うことに夢中になっているだとか、ティエリアが起きていることに気づいていないだとか、食堂のドアが少し開いているのに気づいていないだとか、推測はいくらでもできるが。
まぁ、理由はどうであろうとかまわない。彼の歌が聴ける。それだけで十分だ。
ティエリアにしては柔らかい表情を浮かべ、目を閉じる。
そろそろジャマが入ってくるだろうが、それまでは特等席でこの歌を聴いておこう。
「ん?なんだぁ?」
暇で暇でしょうがなかったので船を操縦していた兄をからかいに来たミハエルは、そこで普段聞き慣れないものを聞いた。
歌、である。
末っ子のネーナはたまに聞いているのを見るが、長男のヨハンが聞いている場面は見たことがない。それから、あまり興味がない自分も聞かないし。だから、あまり歌を聞いたという記憶はない。
「あぁ、ミハエルか」
不思議がっているみえはるに気づいたのか、ヨハンが視線を彼に向けた。
「兄貴、何聴いてんの?」
「歌だ」
「いや、そりゃ聞けば分かるけど」
ミハエルが聞きたいのはそういうことではない。
どうして歌を聴いてるのかという、それの理由を遠回しに訊いたのだが。
どう言ったらいいか、と悩むミハエルを見て、ヨハンが笑った。
「これはプトレマイオスからの音声だ」
「へぇ……って、え?」
「先日あちらに行ったとき、うっかり電源の入った通信機を落としてしまってな」
「それって盗聴じゃ」
「偶然なのだからしかたないだろう」
しれっと言う兄を呆れて見、それからしっかりと音声に耳を傾ける。
「……あ、この声って」
「分かったか?」
しばらく聞いていて、それが誰の声か分かった。
思わず船の目的地を確認すると、そこはプトレマイオス。
「…どうせなら、生で聞きたいって?」
「いいや?通信機を取りに行くだけだが?」
ヨハンの顔を見れば、それが冗談であることは容易に分かった。
が、それについては何も言わず、ミハエルは笑って肩をすくめた。
何か言ってヨハンの気が変わってしまうのはゴメンだ。自分だって彼の歌を直に聴きたいのだから。
ただ……着いたときに歌が終わっていたら、という不安はあったが。
「おー、やっぱりアレルヤかー」
「ウタッテタ、ウタッテタ!」
食堂のドアが開き、ひょこりとロックオンが顔を出した。足下にはハロ。
彼が入ってくると次は刹那が来た。
「あ、ロックオンにハロ……それに刹那も。どうしたの?」
首をかしげると、ロックオンは笑った。
「いやぁ?歌が聞こえたから。なぁ、刹那」
「あぁ」
答えながら、二人はアレルヤの前に座った。
と同時に、後ろからガタリと音がしてそれから、眠っていたはずのティエリアがアレルヤの横に来た。
「意外と早かったな」
それから、当たり前のようにアレルヤの隣に座る。
その一瞬、目の前の二人が殺気だったような気がしたのは気のせいだろうか……すぐにそんな感じは消えてしまったので、多分気のせいだろう。
「ティエリア、起こしちゃった?ゴメンね」
「気にするな。いいものを聴けた」
「……そう?」
面と向かってほめられると、とても嬉しい。
『ちっ……聴かれてたのか』
「……?どうかしたの、ハレルヤ?」
『なんでもねーよ』
ぼそり、と半身が何か言った気がしたが、上手く聞き取れなかった。
だから訊いたのに、彼はふいっと横を向いて答えてくれない。
どうやったら教えてくれるだろうか。
「アレルヤ」
が、その思考は刹那の言葉に遮られた。
彼の顔を見る。少し、深刻そうな表情だ。
何だろう、と不安になる。
「また、歌ってくれるか?」
が、彼の口からこぼれ出たのはこんな言葉。
アレルヤは微笑んだ。
「いいよ、また、機会があったらね」
「では、さっそく歌ってもらおう。さっきと同じ曲でいい」
「分かったよ、ティエリア」
笑みを深くして、それからアレルヤは息を吸った。
果たして、トリニティは間に合ったんだろうか……。
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