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「さて……どこから話すべきだろうね?」
「どこってお前……どこでも良いんじゃねぇか?てーか、どこから話しても変わらんぇだろ。俺たちはずっと一緒だったし、どこから話しても問題ねぇ」
「…そうだけどね」
その通りだと、アレルヤは軽く肩を竦めた。離れていても繋がっていた自分たちに、改まって話すような事柄は正直、無い。
けれど、こんな事態になったのだから……状況整理のためにでも、話すことは必要だと思えた。
「じゃあ、まずは名前からいこうか。僕はアレルヤ。君は?」
「ハレルヤ。ハレルヤ・ハプティズムだぜ」
「それなら……今、これが自分の名前だという実感を持って口に出来る名前は?」
そう訊くと、ハレルヤはとても嫌そうな顔をした。当然だ。その名前には……あまり良い思い出はない。だから自分にだって当然ほとんど良い思い出は無いのだが、裏を返せば少しはあった。いくら殺されてしまったときの名前だとはいえ、殺される前は楽しいことだってあったのだから。
「……『 』だ。お前は」
「僕は『 』。うん、やっぱり君も思い出してるんだね」
良かった、と言おうとして……アレルヤは止めた。良いのかどうかはイマイチ判断できない。恐らく、これは出来れば忘れてしまいたい類の記憶だ。
となると……どうしたって話が続くわけもない。思い出した記憶の殆どは嫌な思い出ばかり。口にしたって気が滅入る物ばかりなのだから。
はぁ、と溜息を吐いてガラスケースの上に腰掛ける。二人は未だに博物館の中にいた。きっと機械の発動により直ぐに都を支配している月代の誰かが来るだろうが、彼らには自分たちを見ることが出来ないという確信があったから。二人のいる場所は、一時的だが世界から隔絶された場所にあった。
「ハレルヤ……これからどうしようか」
「リジェネを潰して、変な研究をぶっ潰す。逆も可ってトコだな」
「……それ、潰してしかないよ?」
「んじゃ燃やすか?」
「いやぁ……余計悪いんじゃない…?」
潰すのなら瓦礫が残りそうだが、燃やしたら跡形もなくなりそうだった。
というか、近所の人々に迷惑が掛かりそうだった。
「もっと平和的に消そうよ……ね?」
「平和的に消すって何だ…?消す時点で平和的じゃねぇだろ、絶対に」
「うっ……」
アレルヤは言葉に詰まった。ハレルヤの言うことは事実だった。が、こればかりは後に引けない。片割れの言葉が事実だろうと何だろうと、今の自分の意見を押し切らないと本気で近隣住人に被害が行く。それはマズイと思うわけだ。
「だっ…だから、つまり、被害は必要最小限ってワケで……」
「消すことに依存はねぇのか?」
「……本当は嫌だけど……」
けど、誰かが消さなければならないのだ。人間たちが今行っている研究は危険すぎるし、リジェネという存在は矛盾をはらみすぎている。両方とも放置してはいけない。
「……でも、必要だからね」
「リジェネに関しては『俺』に責任があるしな……俺も消すって意見には賛成だぜ?」
「問題は、いつまでに消すか、かな?」
「んなの決まってんだろ。例のパーティの始まる前だ」
「……え」
「折角お前に女装させて遊べるってのに、その機会を俺が逃すとでも?」
フッと笑うハレルヤを少し睨め付ける。……実は少し期待していた。
どうせゴタゴタでパーティの日は先延ばしになるだろうから、恐らく、ハレルヤの言うとおりになる。だから…アレルヤは渋々頷いた。
「……仕方ないね」