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拍手再録。
今回はお正月スペシャルです。



~お年玉をめぐる攻防戦~

「おい茶髪ー、とっとと金出せ」
「……情緒も何もないな、お前。てーか二十歳、何言ってんだよ」
「いいんだよ。テメェは搾取されるキャラだろーが」
「搾取…ねぇ。否定できないのが悲しいぜ」
 日付が変わって……つまり十二時を回って直ぐの言葉に、ロックオンは苦笑を浮かべるしかなかった。らしいといえばらしいのだが、せめて、一回眠って起きてからにしてはくれなかったものだろうか。
 まぁ、予想は付いていたので、服のポケットから用意していたお年玉袋を取り出す。
「ほい、これがハレルヤのな」
「……んだよ、少ねぇの」
「一万円入ってるんだけどな?」
 それで少ないってどういうことでしょうかね。心の中で呟きながら、もっと入れると大変なことになるのだと、残りの四つの袋に服の上から触れて思う。刹那、ティエリア、アレルヤ、そして何故かライルの物も用意しており、それら全てに同じだけの額が入っている。そうしないと刹那とティエリアが煩い。
 だから、これ以上求められても困るのだが。
「お前作家だろ?こんなの無くても金は十分にあるんじゃ……」
「テメェから奪い取るってのが大切なんじゃねぇか」
「……さいですか」
 当たり前だろ?と言わんばかりの態度に肩を落とす。
 と、ここでアレルヤたちと食器をキッチンへ運んでいたライルが帰ってきた。救い……にはならないだろう、多分。
 案の定というか、彼はたかられているこちらを気にすることなく、ハレルヤの手の中にあるものへと注意を向けていた。
「お、ハレルヤはもうお年玉もらってんだ」
「…そうだ、茶髪、コイツの金を寄こせ。んなら問題ねぇだろ」
「はぁ!?」
 ライルが素っ頓狂な声を上げたが、それに構うことなくハレルヤはポケットの中に眠っている金に狙いを定めたらしい。
 にまり、と彼の口元に猫のような笑みが浮かぶのを見て、ロックオンは天を仰いだ。

(2009/02/11)


 ~今年もよろしく~

 クロスロード家は、新年早々に騒がしかった。
「ルイス……家族の人と一緒でなくていいの?お母さんとか」
「だーいじょうぶだって!どうせ後からママもパパもこっちに来るし」
「えぇぇぇ!?」
「ちゃんとお姉様にも許可はもらったわよ?」
「ちょっ…姉さん本当!?」
「本当よー」
 答えながら、騒がしさの原因たる金髪の少女と弟の会話を聞く。原因……そう、彼女が現状の原因だ。新年早々にやって来たかと思うと、とても自然な動作で家に上がり込んできた彼女。玄関を開けてしまったことにも原因があるのなら、自分も現状の原因の一端を担っていると言うことになるのだろうか。そして……勢いに押されて、彼女の両親が来ることを認めてしまったことも、原因の一端ではあるだろう。
 はぁ、と溜息を吐いて、おせちの入っている重箱をテーブルの上に出す。
 せっかくの新年、姉弟二人で静かにのんびりと過ごそうと思っていたのに、これでは計画なんてそんなになかったけれど、とにかく、それを変えていかなければならない。少なくとも今日中に初詣は無理だ。
「沙慈」
「何、姉さん?」
「ちょっと箸とか出してくれる?」
「あ、うん」
 素直に席を立って台所の食器棚を開く弟の姿を認めつつ、絹江は我が家のようにくつろいでテレビを見ているルイスの方を向く。
「ルイス、お父様とお母様はいついらっしゃるって?」
「んーっと……昼過ぎ?」
「疑問系なのね……」
 らしいといえばらしい返答。
 それに呆れながらも肩を竦めていると、にっこりと笑みを浮かべたルイスが口を開いた。
「お姉様」
「何?」
「今年も沙慈君は任せてくださいね」
「……」
 今年も任せて良いんだろうかと、テレビの前から動かないルイスを見て、思った。

(2009/02/11)


~初詣の危機~

 やはり、一月一日というのは神社にやってくる人間が多い。
 遅々として進まない行列の中程で、ヨハンは小さく溜息を吐いた。待つのは嫌いではない、が、ここには気の短い二人の弟妹たちもいるのだ。そろそろ出店への興味も薄れてしまうころだろうから……危ないかも知れない。
 そして、こういう予感ほど当たってしまうものなのだ。
「ネーナ、もう疲れたーっ!」
「俺も!ったくよ……何でこんなに来てんだよ…今日じゃなくっても良いだろ…」
「…いや、今日でなければならない気もするんだが」
 初詣だし。
 些かどころでなく理不尽に聞こえる言葉に呆れながらも、順番を抜かして前へ行こうとする二人の手を掴んでおくことは忘れない。こんな状況で順番ぬかしなどしてしまえば、間違いなく自分たちは非難の砲火を浴びることになる。出来れば新年早々、そんな事態に陥るのは遠慮したかった。いや、可能ならば一年中ずっと……なのだが、それはおそらく実現しない願いだろう。
 それとなく新しい小遣いを握らせれば大人しくなったネーナとミハエルに安堵の息を吐きつつ、少しだけ進んだ列に流される。
「二人はどんな願い事をするんだ?」
「私はね、今年はもっとスイーツ食べたいってお願いする」
「俺は肉かな」
「……そうか」
 らしいといえばらしいのだが、何ともいえない願いばかりだった。
 これは嘆くところなのかどうだろうかと悩んでいる間に、三人の目の前には賽銭箱の姿があった。いつの間にかそんな所まで進んでいたらしい。
「ヨハン兄、お賽銭ちょうだい!」
「十円で良いな?」
「おう!サンキュー兄貴!」
 渡した小銭を投げて真剣に手を合わせている弟妹たちから視線を外し、ヨハンも十円玉を投げて手を合わせる。

 今年は、どうか静かに暮らせますように。

(2009/02/11) 
 

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