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それは大きな昔の話。
伝承を纏めた本に記された事象ではなく、昔々に本当にあった物語。
そして、物語としては粗悪品のつまらない話。
あるところに二人の子供がいた。その二人は兄弟で、そして普通ではない妙な力を持っていた。他の、誰一人として持つことの叶わなかった力。
片や精神を司り。
片や事象を司り。
そんな二人は平和に、一人の娘と暮らしていた。
娘には力など無く、子供たちとも血の繋がりはなかった。代わりに、もっと別の暖かな繋がりを持っていた。
ある日のこと。
子供のうち、弟とされていた方が消えた。
正確に言うと。
殺された。
力を恐れる者たちの仕業だった。彼らにとって子供たちの性格、思考などはどうでも良い物であり、力を取り除くことのみが大切なことだった。だから躊躇わず、子供のことも理解することなく、殺した。
それが間違いだと知る前に。
事実を知ったもう一人の子供。
子供は娘の制止も振り切り、実行者たちを壊した。
実行者たちの家族も、壊した。
すると全員いなくなった。
兄とされていた子供と、娘を除いて。
しかしそれでも、子供は間違ったことをしたとも思わなかった。それは当然の報いであり、それ以上でも以下でもない。そう感じていた。
娘の方も、程度の差こそ合ったが同じく思った。
二人はそれから、二人だけの世界で暮らしていった。
だが、子供と違って徒人である娘は老婆となり、寿命が訪れた。
子供は何時しか青年となっており、以来、成長が止まっていた。
青年となった子供には、老婆となった娘を失うことが耐えられなかった。ずっと一緒にいた相手が、自分を残して消えていくというのが辛かった。
だから青年は老婆に許可を得て、老婆を「 」にした。
かくして一人になった青年は死のうと考える。大切だった二人はおらず、ならば、生きていようと意味はない。
けれども、死ねなかった。
生まれもっていた力は強くなりすぎて、死ねなかった。
どうするべきなのだろうかと、青年は考える。
考えて、考えて、考えて。
何も浮かばなかった。
青年は、途方に暮れた。