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今日ですよね、アレルヤの誕生日。
誕生日祝いとして書いたはず、なのですが、何だかどこか薄暗い…。

でも、微妙にハッピーエンドなんじゃないでしょうか。




 君がいなくなってから四度目の、誕生日。
 CBのみんなも、マリーも、僕の誕生したこの日を祝ってくれた。とても盛大に、盛大すぎるほどに。みんな張り切っちゃって、僕としては嬉しいやら申し訳ないやらで、でもね、やっぱり嬉しかったんだ。他人に祝われるのがこうも嬉しいものだなんてね、それを知ることが出来ただけでもCBに来た意味はあるんじゃないかな。
 ケーキはどうしてだかウェディングケーキだったよ。何でだろう。ケーキを前に刹那とティエリアが口論を展開していたからきっと、二人のどちらかが手配したんだろうね。てっきりスメラギさんが意図的にやったのかと思ったんだけど、彼女も面白そうに呆れながらケーキを見ていたから違うって分かったよ。
 むしろ、このミスはありがたかったんだけれどね。普通のケーキじゃ大きさが足りないから。トレミークルーも結構大人数だもの。こういうのを大所帯っていうんだっけ。まぁ多すぎて余りはしたけれど、足りないよりは良いと思うよ。余ったと言っても四段あるうちの一番下の三分の二だけだからね、やっぱりケーキはこれで良かったみたい。不幸中の幸いだね。
 料理の方はね、フェルトとミレイナとアニューと、もちろんマリーとが作った手作りだって。もちろん美味しかったよ。可愛らしく盛りつけてあって、女の子だなぁってしみじみと思った。僕も綺麗に盛りつけるのは好きだけれど、あそこまで可愛くは無理な気がするんだ。きっと、君に言えば反論が帰ってくるんだろうね。十分に可愛らしく盛りつけてるだろ、って。簡単に想像できてしまったよ。
 スメラギさんはと言うとね、飲み物係だったんだ。結果は分かるよね。
 全てアルコール飲料だと分かったときは大変だったよ。未成年がいるんだからね、問題にもなるさ。既に酔っていたスメラギさんは笑いながら良いじゃないとか言ってたけれど、それはどうにか止められた。適当に食堂の備え付けの冷蔵庫の中からジュースを見つけてそれを使ったんだけれど、もしも止めることが出来ていなかったら、なんて思うとどうしようもなく苦笑が浮かんでくるね。お酒になんて免疫は一つもないだろうし、酔ってバタンと倒れてしまいかねないもの。笑い話で済めば良いんだけれど、そこで敵が来たら大変だからね。僕らもほどほどにしておいたよ。でも、戦術予報士が酔ってたらどうしようもないよね、コレって。それでもどうにか出来るんだろうところが、スメラギさんの凄いところ、なんだけれど。
 プレゼントは用意できなかったって、そういえばマリーとスメラギさん、とっても残念そうに言っていたな。良いのに、別にそんな物。祝ってもらえるだけで十分に満足だから。これ以上を求めるなんて凄くワガママだよね。
 そうそう、イアンさんとラッセさんとライルと沙慈君はね、食堂の飾り付けをしてくれたんだそうだよ。数日前から折り紙を使ってわっかを作って繋げて、それを壁にいっぱい付けるんだ。折り紙はね、沙慈君が教えてくれたんだよ。日本の伝統的な物らしいんだけれど。それで、パーティの間にこっそり折り紙で作れる物の作り方を教えてもらったんだ。鶴が一番ポピュラーなんだとか。
 でね、その鶴って、千羽折ったら願い事が叶うんだそうだよ。
 千羽鶴っていうんだって。
 それで僕、思わず残りの折り紙全部頂戴って言ってしまったんだ。
 沙慈君は驚いたようにこっちを見てたけれど、僕はその時本気だったんだよ。そして、それは今も一緒。だからこうやって想っているんだ。
 もらった折り紙は全部で九百枚。百枚ほど、千枚には足りない折り紙。
 だけれど、僕はそれで良いと思ってる。
 願い事はこれで、叶わないでしょう?
 今の僕の願いはただ一つだけなんだけれど、それこそ思うのはワガママだよね。今の僕にはマリーがいて、刹那やティエリアと言った仲間たちがいて、CBっていう帰っても良い場所があんだから。十分すぎるほどこれらで、僕は満たされているんだから。
 ポッカリ空いた穴も、隠せるくらいには満たされているつもりだよ。
 今の僕はかつて持っていなかったいろいろな物を持っているように思える。それは、生きていCBという組織に入ったからこそ得ることが出来た物。僕が、僕らが生きるために世界から蹴落としてしまった同胞たちには得ることが出来ない物。
 だからね、それを得た時点で僕は満足しないといけない。
 でもやっぱり、穴は穴なんだ。どれだけ隠そうと後は残るよ。
 今の僕はたくさん持っている。けれど。

 君だけがいないんだ、ハレルヤ」


 最後に静かにアレルヤは呟いて、左手で右目にそっと手を当てた。
 いない、いない、ずっと昔から一緒だった大切な片割れ。誰よりも傍にいた鏡のように正反対の、受け入れがたい思考を持った、最も近しい他人であり最も遠い自分である、

 何よりも掛け替えのない存在であった片割れ。

 一人ではないのだろうと思う。けれどアレルヤは今でも『ひとり』なのだ。
 右手にあった折り紙をぐしゃりと握りつぶし、ゆっくりと瞳を閉じる。パーティが終わって大分たった今は、もう既に真夜中。横たわっているベッドの下に置き去りにされた、飛ぶことのない鶴たちは明日の朝にでも片付けよう。彼らは、消えたりしない。
 襲ってきた睡魔に大人しく身をゆだね、意識を徐々に暗闇へと落としていく。




『             』





 最後に声が聞こえたような気がしたけれど、それを掴む間もなくアレルヤの意識は完全に落ちた。





 おやすみ、アレルヤ。
 今年もお前に幸があればいいな。
 俺だってそのくらいは願ってやるよ。
 何せ今日はお前の誕生日、だろ?





ちょっとだけ仕掛けがありますよ。とある箇所を反転したらちょっとした、ね。

一つを除いて欲しい物を全部持っていると思うアレルヤ。
けれど本当は欲しい物が全部あるアレルヤ。

そんな感じのお話でした。

ともあれ。
お誕生日おめでとう!
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