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「えっとな、この状態は本当にどーにかしないとマズイと思うんだけど」
「…同感」
「てかセラヴィーはともかくキュリオスとアリオスが帰ってこないってどういう?」
「俺が知るわけがないだろう」
デュナメスたちは壁際でこそこそと話し合っていた。それは現状についてであり、自分たちにとってはかなり重要な意味を持つ物であった。
何せ、ヴァーチェの苛立ちが凄いことになっている。
仮にアリオスだけ、キュリオスだけ、あるいはあの二人が帰ってこなかったとしたら。そうしたら反応は少しは違っていただろう。恐らく心配をしていたハズである。そして、それは今も同じであろうが、しかし。
問題はセラヴィーが居ない方だった。
「にしてもセラヴィーも自殺行為のような行動を何度も、よく続けられる物だな……いっそ感心する、俺は」
「エクシア、そういう事は感心しないでくれ。いっそだろうとなんだろうと」
「オレンジ組のことはさておいて」
「…オレンジ組…」
「え?いやだってアイツらオレンジじゃんか」
「…ハロも?」
「んー…アイツらはどうなんだろうな?今居ないけど」
「入れても構わないんじゃないのか」
「ちょっと待った!」
次第に逸れて行っている会話に慌ててストップをかける。
だから、今話し合っているのはそういうことではなくて。
聞かれると後々面倒になる予感があるので、デュナメスは小声で叫んだ。
「ヴァーチェをどうするかが今の議題だろ!?」
「…そういえば」
「そういう議題もあったな」
「いやゴメンな、本気で忘れてた」
「……」
とりあえずケルディムだけでいいから殴っても良いだろうか。大丈夫、ちゃんと手加減するし一発だけだから。
そんなことをデュナメスにさえ思わせるような、今はそんな状況だった。
…なんかヴァーチェの苛立ちが移っている気がする。そして、それはある意味有り得そうな話でもあった。何せヴァーチェだから。
「…セラヴィーを連れ戻すしかないだろう」
「……やっぱそれだけか」
きちんとエクシアが意見を出してくれたが、やはりというべきか提案はそれだけだった。実際、それ以外に解決法が見あたらないのも事実。キュリオスがいたら癒し効果でどうにか出来たかもしれないのに。
セラヴィーは、昔から自分勝手に行動することが多かった。過去の場合は杖状態だったので共犯を作り出す手間が、あるにはあったのだが。が、今現在、彼は人型となって自由に動ける権利を有してしまったのである。
今思うと軽く問題だった。
「ケルディム、お前なら分かるんじゃないか?」
「多分。でもちょっと疲れてるから一眠りしたらで良いか?」
「この状況で眠れるんなら一時間くらいは許可する」
「…うわ、凄い条件だ」
その言葉は『一時間』の方ではなくて『この状況で』の方に掛かるのだろう。ヴァーチェの苛立ちが収まらないこの場所で、眠ることが出来たら素晴らしい図太さである。
数秒後、諦めたように頭を掻いて、ケルディムは了解、と小さく口にした。
眠るのは後にしたらしい。賢明な判断だ。