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ソーマはグラハムと共に、とある家を探していた。
パーファシー家。
かつて『マリー・パーファシー』が属していた家である。
なにぶん昔のことなので、その上すっかりと家のことはどうでも良いと思ってしまったため、当たり前のように家の位置など忘れてしまっていた。いや、実際に当然なのだ。ソーマにとっての家というのは自分を拾ってくれたあの人たちの家であり、アレルヤたちが出迎えてくれるかの屋敷のことなのだから。
それなのに家を探してみようと考えたのは一種の気まぐれか、一時の気の迷いなのだろう。どうせ見つかったところで何がどうなるわけでもないだろうが、それでも見ておきたい、というのはやはり。
「申し訳ありません、こんなことに付き合わせてしまって…」
「気になどするな、我が親愛なる妹君。私も好きで付き合っているのだからな」
「…ありがとうございます」
その言葉は嬉しい。嬉しいのだが素直に喜べないのはどうしてだろうか。
多少引きつった笑顔を作り出してしまったことはとりあえず、仕方がないと思う。
「にしても…夜、明けてしまいましたね。心配されているでしょうか…」
「案じることなど無いよ、妹君。カタギリならば私の行動などいくらでも読めるだろうからな!心配すると言っても恐らく最初に僅か程度だろう」
「…それはむしろ案じるべきなのでは」
心配されているだろう、ということではなくてカタギリとの関係の方。あの眼鏡の狩人は既に、グラハムに関しては諦観を持って見ている節があるので尚更に。グラハムがもう少し色々と直せばどうにかなると思うのだが。
まぁ、気にしても栓のないことだろう。自分が気にしたところでグラハムが変わるとも考えにくい。何せあのハレルヤ、ティエリアの二人がずっと注意してきても変わらなかったというグラハムの思考回路である。
ソーマが変えようなど、まず不可能と思って間違いなかった。
正確に言うと、誰一人として出来ないと思う。
「ですが、私が貴方と一緒にいるとは誰も知らないのではないでしょうか。合流はある意味で必然でしたが、偶然でもありますし」
「うむ…言われてみればそれもそうだな、妹君」
「…妹君は止めてください」
何か凄く恥ずかしい。
というか、一体どうして妹君。グラハムが『我が親愛なる妹君』と言っていたので、その略だろうとは思うのだが。妹と認定されていたのは出会って間もない頃のことなので、そこから今に至る長い経過の中で受け入れてはしまったが、それはそれなのである。
呼ばれるのと呼ばれないのとでは凄く違う。
「ふむ、ならば何と呼べばいいのだろうか?」
「普通にソーマ、で良いです」
「ソーマよりは妹君の方が言いやすいぞ?」
「それは貴方だけでしょうから安心してください」
絶対に『ソーマ』の方が言いやすい。『妹君』の方は無駄に音数が多いのだ。
だがしかし、その一般論を果たしてグラハムが受け入れるかどうか。
「妹君、やはり妹君の方が言いやすいのだが」
「…そうですか」
ならば何を言っても無駄なのだろう。
ソーマは思い、軽く肩をガクリと落とした。
そんな会話をしながら探していた家は。
全く、影も形も見つからなかった。
不自然なほどに。