[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今日はニールとライルの誕生日です。
のでお祝い文。今回はエイミーに祝っていただきましょう。
11.春の訪れ
いつもと違う風に、エイミーは顔を上げた。
昨日まで吹いていた、冷たい冬の風とは少し違う、もっと別の暖かな春の風。
そしてエイミーは知っていた。その風が吹く日が一体どんな日なのかを。他の誰も春の風を、訪れを感じられないのに自分だけ違いを覚えるその日の、その理由を。だってこの日はとても大切な日なのだから。
今日は、二人の兄の誕生日なのだ。
だからこの日は何よりも大切で、何よりも特別な日なのである。
「…起きてるかな?」
呟いて、エイミーは庭から室内へと戻ることにした。今日は特別な日だからと、母が兄たちを存分に寝かせようと配慮したために、二人の兄たちは部屋で起こされることなく眠り続けていた。けれど、そろそろ時間も時間なので起きているかもしれない。起きてなかったら……そっと二人のそばから離れよう。
だって今日は特別な日。
今日くらい、自由気ままに、特別に。
「お兄ちゃんたちー…起きてるー?」
ニールとライルの部屋にたどり着いたエイミーは、ドアを開いてこっそりと中を見渡した。二人分の机、棚、服を掛ける物、ゲーム、閉じられたままのカーテン、明かりの付いていない電球、そしてちょっと大きめのベッドが一つ。
その上の、兄二人。
とととっと寄ってみて、エイミーはくすっと笑った。
まず、ニールが寝ている。そしてその腹の上にライルの右足が乗っており、当然ながらニールは魘されていた。寝苦しいのだろう。対照的にライルは本当に呑気に快適そうに寝ているのだから何とも。
ただ二人とも、布団が落ちてしまっていて寒そうだった。今日が彼らに、エイミーにとって特別な日であろうと何であろうと、寒さというのは誰にでも平等にやってくる物だ。
「…布団かけなきゃ」
というわけで、まずはベッド下に落ちている布団を上げて、二人の上に掛けなければならない。薄ければ問題ないのだろうが、この時期はまだまだ布団は厚い。小さなエイミーでは若干どころでなく大変だった。
それでもどうにか上げて、腹の出ているライルの上にまず掛けて、次にニール……と思ったけれどライルに掛けたら自然とニールの上にも掛かったので良いだろう。二枚目の布団を上げるのは辛いこともある。
一仕事終えたエイミーは、ふぅと息を吐いてベッドの傍に座り込んだ。少し休憩したら部屋から出て行くつもりである。
が。
「…エイミー?」
「あ、ニールお兄ちゃん…起こしちゃったの?」
「いいや。そろそろ起きようかなってところだったし」
よっとライルを押しのけて起き上がったニールは、エイミーを抱き上げてベッドの上に上げた。床よりもふわりとしていて座り心地が良い。
「で、エイミーは俺たちに布団を掛けてくれたのか?」
「うん。寒そうだったから」
「そっか。良い子だな、エイミー」
「お兄ちゃんたちが風引いたら大変だもん」
せっかくの特別な日に風邪を引くなんて洒落にもならない。
そう思いながら頷くと、優しく微笑みを作るニールの顔。
「ありがと。で、起こしに来たとかいうのは?」
「無いよ。だって今日はお兄ちゃんたちの誕生日だから、お母さんも思いっきり寝坊させてあげなさいって言ってたから」
「でもな…そろそろ起きても良い時間帯だよな」
ニールは言いながら時計を取った。時計の数字が示すのは、もう昼にも近い時間帯。
「これじゃ、朝食が昼食になるぜ…ライルも起こさないと」
「うん!あのね、起きてきたらお兄ちゃんたちにプレゼントがあるんだって!」
「プレゼント?あ、まぁ誕生日だしな」
「とっておきなんだって!」
「それは楽しみだな。最近、何か父さんたち張り切ってるし」
「私からもあるんだよ、プレゼント!」
手作りのお菓子。母と一緒に作ったマドレーヌである。…といっても、まだ背丈も足りないから、殆ど母にやってもらったのだが。いつか、ちゃんと一人だけで出来るようになれたらいいなと思う。
しかし、たとえそうであっても、それにエイミーの手が加わっていることは事実。
「ちゃんと食べてね、ニールお兄ちゃん」
「分かってるって。残さず食べてやるから」
けれどその前に、まずはライルを起こさないと。
エイミーが二人をどう呼ぶかが分からないのですが…お兄ちゃん、で良いですよね。
ニール、ライル。
改めて。
お誕生日、おめでとう。