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ミレイナは困っていた。
非常に困っていた。
「ここ、どこですぅー?」
何故ならば、いつの間にか見も知りもしない場所へと来てしまっていたからである。
見も知りもしない、というのは決して比喩表現でも何でもない。単なる事実で、それ以上でも以下でもなく。つまり本当に見も知りもしない土地へと、いつの間にか来ていたのだった。
周りに立ち並ぶのは高い高い建物。多分、人が住む建物だろう。
歩く地面は石畳でしっかりと舗装されており、結構立派な場所なんだろうというのは分かる。分かるが、肝心の『どこか』までは分からない。
何でこうなったのだろうと、今へ至るまでの記憶を思い返してみる。もしかしたらその中に理由が見つかるかもしれない。
昨日の夜は何も変わらず、普通に寝た。朝は父に起こされて、今はまさにフェルトの家へと遊びに行くところだったのだが。
気がつけばこんな場所、なのである。
「うむぅ…謎ですぅ…」
腕を組みながら、歩みは止めずにミレイナは呟いた。謎、というよりむしろ七不思議的な物である気がするけれど、気にしない。どっちにしろ『ワケの分からないもの』であることに代わりなど無いのだから。
思い返すと昨日にも、これと似たような経験をしているのだ。昨日はティエリアの屋敷に行こうかと思った瞬間に屋敷の中にいた。そこでソーマに会って、マリーというソーマのそっくりさんを見たのも昨日である。
そういえば過去とか何とか色々言っていたけれど……忘れた。状況に付いていくのに精一杯だったから、そこまで頭を働かせる余裕はなかったのである。
ふと、今回はここに来る前は何を思っていただろうかと考える。確か、いつかは都に行ってみたいと思っていたのではないだろうか。
そして昨日のティエリアの屋敷にいたときの例。
「…もしかして、行きたいと思ったところに行ってしまうんですぅ?」
だとしたら大変だ。うかつに行きたい場所を頭の中に思い浮かべることが出来なくなってしまう。変なところを思い浮かべて、変なところへ行ってしまったら大事だ。たとえば……うん、男子トイレとか。
しかし、だとしたらどうしてフェルトの家の方じゃないのかと、そういう事も気になる。ということは考えたことは本当とは違うのかもしれない。
じゃあ何なのだろうと考えて、そこで行き詰まる。
どうにもこうにも、万事休すなのだった。
それでも、まずは。
「ちゃんと都なのかどうか確認しなくては、です…っ」
グッと手を握りしめ、通行人一人いない通りで、おーっ!と空に掲げる。
かくして、第一の目的が決定したところで。
「では、ここに入ってみるです!大きい建物ですから、きっと誰かいるはずですぅ!」
ミレイナは直ぐ傍にあった大きな建造物の中へと足を踏み入れた。朝早いからか警備の人たちであろう人間は倒れまくっており、毛布とか無いんだろうかと思いながらも、とりあえず放置の方向で彼らは扱うことにした。
そうしてミレイナが入った建物は。
都の、博物館だった。