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「…追っ手は捲けた?」
「多分な…ってか追っ手っつっても二人だけだし、楽勝といえば楽勝だろ」
「だよねぇ…」
入り組んだ都のとある路地裏の片隅で、ミレイナたち三人は座り込んでいた。正確に言うとミレイナが座り込み、他の二人は壁にもたれかかるという状態だが。
そして、目の前で親しげに離す子供と青年を眺め、ミレイナはうむぅと考え込んでいた。
どうしてだかこの場所にいたこともだが、この二人がここまで親しいとは全く知らなかった。というか子供が喋れることも知らなかった。知識として知ってはいたのだが、実際に聞いたことがなかったので何とも。
にしても、子供の目。色が変わっているのには驚いた。
いつもは紅なのだが、今はハプティズムさんたちのようにオッドアイである。
あとさらに付け加えて。
服がコートでなくて女の子物のスカートなのも驚いた。
「あのぅ……」
「ん?何だ?」
「そのですね、そちらの子供さんとはどういう関係なのですか?」
「子供……あぁ、教えてなかったよな、そういや」
そう呟いて、ついと子供を指さして一言。
さも当然のように。
「コイツはアレルヤだ」
「へぇ、ハプティズムさんその1なのですか……え?」
最初は聞き流して、その後直ぐに言葉の意味を正確に理解して思わず聞き返す。
だって、アレルヤと言えばハレルヤとそっくりの双子さんであり、決してこのように小さな子供ではない。オッドアイと黒髪という共通点はあるが、それだけで同一人物と繋げるわけにもいくまい。
そんな思いがグルグルとミレイナの中を回っていると知ってか知らずか、ハレルヤは念を押すようにもう一度繰り返した。
「だから、コイツはアレルヤ。俺のたった一人の片割れ」
「えっとね、ミレイナ、ほら変身能力とかあーいうのを思い浮かべてくれたらおおよそ間違いじゃないから」
「じゃあ、少しは間違いです?」
「…えっと、そのね?」
困ったように笑う子供を見て、ミレイナはようやく理解した。
成る程、彼は確かにアレルヤだ。行動がそういう感じ。
「成る程、理解したですよハプティズムその2さん!」
「…だから『その2』っての止めろ」
「え?でもそうしたら混じってしまうですよ?」
ウンザリした様子のハレルヤに、ミレイナはキョトンと問い返した。アレルヤもハレルヤも『ハプティズム』なのだから、その1、その2とでも付けなければ分からなくなってしまうではないか。
だが、止めろと今言われてしまったので。
ミレイナは悩み、ポンと手を打った。
「その2がダメならBさんとかで良いです?」
「良くねぇよ!普通に名前で呼べって言ってんだ!」
「姓も名前ですぅ」
「そーいう屁理屈はいらねぇんだよ!」
「ま…まぁ落ち着きなよハレルヤ。ほら、ポリシーとか何とかね?」
叫ぶハレルヤに苦笑するアレルヤ。
その様子が楽しくて、ついついミレイナも笑った。